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「チッ」
舌打ちをして頭を掻いてから俺はゆっくり息を吐き出した。
「くーちゃんに相談したのか?」
「……まぁ、『大丈夫か?』って電話もらったから引っ越し終わったこととバイトのこと話したけど」
「俺に先に言えよ」
みっともない嫉妬だ。
いくらかわいいと言っても既婚者の男で、世話になったなんて言葉じゃ済ませられないくらいの恩師なのに。
「ごめん」
俯いてしまった宮部を見て膝を抱えているその手にそっと触れた。
「……バイトってどこで?何すんの?」
「……村瀬くんの大学あるでしょ?あそこから駅越えて歩いたところにあるCafe repos って……」
「カフェ!?お前が!?」
意外過ぎる場所に思わず声が裏返る。
「大学で仲良くなった先輩が先輩のバイト先紹介してくれて……」
自分でも自覚があるくらい変な顔をしているはずだ。
宮部の声が萎んでいく。
「とりあえず……明日も……」
「俺も行く!」
「は?」
「どんな店か俺も見たっていいだろ!?」
仲良くなった先輩とか気になることが多過ぎて余裕でなんていられない。
「行くからな!」
有無も言わせず俺はそのまま情けないくらい嫉妬を丸出しにした。
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