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20、第3話「バイト」

 創介さんに待つように言われてイスに座り直した俺はいちごのジュレを口に運びながら早まったのではないか?と少し不安になる。だが、 「うっま……」  いちごの自然な甘さと口当たりのいいジュレに思わず声を出した。 「気に入った?おいしいでしょ?それ」  にこっと笑うあのかわいらしい店員が目の前に居て跳ね上がる。 「あ、ごめん!びっくりさせたね」  ペロッと舌を出す姿とか……ヤバ過ぎる。あれ?……もしかして、女か? 「あ、僕、佐倉(さくら)遥斗(はると)ね!バイト希望って聞いたんだけど……ここ座っていい?」  あ、男……と思いつつ頷くと佐倉さんは向かいのソファーに座ってにっこりと笑った。 「……このまま面接する?」 「め!?」  声を裏返して背筋を伸ばすと佐倉さんはくすくすと笑う。 「あ、かしこまらなくていいよ!名前とシフトの希望とか聞きたいくらいだし僕は店長でもないし!」  言いながら出された淡いグレーのメモ帳とシンプルな真っ黒のペン。  見た目とは違って出てきたシックな小物にちょっとカッコいいとか思ってしまった。 「ここでいいから名前だけ書いてー!」  とりあえずペンを持ってどうしたものかと迷っていると、佐倉さんに指をさされる。 「えーっと……“りゅうき”くん?」 「あ、“るい”です」 「ごめん!琉生くんね!」  笑いながらカウンターの方を見た佐倉さんはそっちに手をヒラヒラとさせてから立ち上がった。

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