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スタッフルームへと連れて来られた俺は置いてあったテーブルの前に座らされてさすがに縮こまる。
目の前にはかなり不機嫌にしか見えない街中で見かけたら絶対に関わっちゃいけないような目つきが悪くてデカくてゴツい男。
「あ、店長の道前 雅美 さんでーす!」
隣に座った佐倉さんがにこっと笑うが窺うように頭を下げるので精一杯だ。
「雅美さーん、琉生くんビビっちゃってますよー!スマイルは無理でももうちょい表情柔らかく……」
「うっせ!」
ガタンと音をさせて足を組んで髪を掻くのを見た佐倉さんはそっとその店長らしい男の肩に手を付いて腰を浮かせる。
「……なら蕩けさせてあげようか?」
フッと声が低くなってびっくりするくらいの色気を帯びた声に肩を揺らしたのは俺だけではない。
「バッ!フザけんなっ!!」
慌ててその手を払って距離を取った店長は口元に拳を当ててゴホンと咳払いをした。
「あ、お二人とも結婚されてるんですね」
とっさに目に入った指輪に触れると、佐倉さんは細めていた目を開いて一瞬にして雰囲気を戻すとまたにこにこと笑う。
「あ、僕ら結婚してんの!」
「へ?」
意味を理解する前に佐倉さんは店長の首に腕を回して抱きついて確かにお揃いの指輪を並べて微笑んだ。
固まる俺を見つつ店長はため息を吐くだけでそれは振り解かない。
「偏見とかある?」
店長に頬をくっつけながら上目遣いをする佐倉さんを見ながら俺は勢いよく首を横に振った。
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