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「宮部」
俺もしゃがんで顔を寄せると、ビクッと跳ねて宮部は尻餅をつく。
「む、村瀬く……近っ」
いつもならこんな慌てた宮部を見ればとりあえず引いただろう。
だが、バイトのシフト調整している間、佐倉さんと店長のエロ話を聞いたり、創介さんと雄吾さんのカップル話を聞いてかなり煽られていた。
ちょいちょい奥の小窓が開いて店長が「黙れ!」と真っ赤な顔で遮ってきたけど、それさえも羨ましくて。
「キスだけ」
そのメガネを奪って距離を詰めると、決して広くはないキッチンで宮部の背は壁にぶつかる。
その瞳をしっかり捕えて顎に手をかけるとそのままゆっくり唇を重ねた。
ギュッと目を閉じた宮部を見て舌を挿れるのは我慢して解放する。
安心したように少し潤んだ瞳で見上げる姿に思わずもう一度口を塞いだが、宮部は俺の腕に必死にしがみついて逃げることはなかった。
「……ヤベ」
トロンと少し色香を漂わせる宮部を目にしてこっちの心臓がもたない。
「飯!……な?」
慌てて離れると、俺はサッと鍋の前に行って味噌汁をつけた。
耳まで赤くしながらも立ち上がってご飯をよそう宮部のメガネをそっとカウンターに置いてキッチンから出る。
なぜか宮部が相手だと今まで女の子たちと軽くしてきたキスでさえ緊張して、それ以上は変に手を出せない気がした。
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