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「村瀬くん?」
トントンと肩を叩かれる感覚と宮部の声で目を覚ます。
「……っ、えぇっ!?」
慌てて飛び起きると宮部はクスクスと笑った。
「俺、寝て……」
「うん、初バイトお疲れ様!疲れたでしょ?店長が持たせてくれたから……これ、一緒に食べない?」
パッと見でわかる、オムライスだ。
宮部がタッパーの蓋を取るとデミグラスソースのいい匂いにつられて腹が鳴った。
「あったかいから皿にこのまま移そうか?」
「いや、むしろわざわざタッパー別にしてあるんだからこのまま食えばいいだろ?洗い物減るし」
サッと立ち上がってスプーンを二つ取ってくるとそのまま一つを宮部に渡す。
カウンターチェアに座らせて俺たちはそのまま食べ始めた。
「サラダとスープくらい作るのに」
「お前は昨日もバイトしてきたんだからもっと疲れてるだろ?」
「村瀬くんも寝ちゃうくらい疲れたんだ?意外」
ふふっと小さく笑う宮部が愛おしい。
「そうか?」
「あの抜群のコミュ力でサッと接客しそうでしょ?」
「テーブル番号と片付けでいっぱいいっぱいだわ」
「あ、水城 さんが書いてたメモ写してきたから一緒に覚える?伝票に書く省略のとかも全部あるからさ」
水城さんは宮部と同じ大学で宮部にあのバイトを紹介した先輩だ。
俺は基本、佐倉さんか創介さんに教えてもらうが、宮部はいつも水城さんで何となく妬いてしまう。
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