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「ひっ、わぁぁっっっ!!」
「まぁ……ちょっとしょっぱいか?」
「ちょっ、待っ!!やめ、離し……て」
声を裏返して必死に離れようとする宮部の腰にしっかり腕を回して宮部を逃すまいとする。
あんなにバクバクうるさかった心臓も落ち着いたのか宮部をしっかり見つめる余裕があった。
真っ赤な顔で俺の腕に囲われて下手に暴れることもできないらしく押して何とかしようとする姿。
「それなら……キスして」
「……は?」
「お前からしてくれたことねぇじゃん?」
ニッと笑うと宮部はうぐっと喉を詰まらせた。
さすがに無理か?と思いつつ見つめていると、宮部はキュッと眉を寄せたままそろりと近づいてくる。
俺の肩についた手もかなり緊張が伝わってきた。
もういい……言おうと思ったが片手が俺の頬に触れてきてドキッとする。
まさかの俺の方まで言葉が出てこなくて少し目を伏せながら近づいてくる口元から逃げそうになった。
何とか耐えて僅かに感じるその柔らかさにも沸騰したような頭では反応できない。
ヤバ……鼻血出てねぇ?
真っ赤になって逃げていった宮部の後ろ姿を見ながら俺は頭を掻きつつため息を吐いた。
ファーストキスでも、そもそも宮部とのキスだって初めてではないのにうるさい心臓。
やけに力が入りつつ掠る程度にしか触れていかなかったあいつの唇。
「初夜どころじゃねぇわ……」
天井を仰いで俺はそのまま床に寝転がった。
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