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「いらっしゃ〜いっ!」  雄吾さんが笑顔で玄関を開けてくれて何かいつもの雰囲気とは違う気がして宮部と目を見合わせる。 「あ、悪い!その酔っ払いは無視していいから!さっさとこっち来いよ!」  玄関のドアを閉めながら靴を脱ぐのをためらっていると、見える階段の上から創介さんが呼ぶのが聞こえた。 「ひっでぇ!スネんぞ!こらっ!」  それを聞いて雄吾さんがクルッと向きを変えて階段を上っていく。  それを見ながらとりあえず鍵を締めて俺たちも上に向かった。宮部にタッパーを渡して雄吾さんが落ちてきても支えられるように俺が先になって。  案の定、ラスト一段でつま先を引っ掛けてバランスを崩した雄吾さんを後ろから支えてドアが開けてあるリビングに入る。 「おー!悪ぃな!ほら!雄吾!」  それに気づいて創介さんはすぐに雄吾さんを支えに来た。 「そう!俺は怒ってる!」 「はいはい」  適当にあしらい連れて行こうとする創介さんの首に腕を回して雄吾さんはそっと目を閉じる。 「仕方ねぇなぁ……」  ため息を吐くと創介さんはその腰を抱き寄せてそっと唇を合わせた。 「あ……ヤダ……」  すぐに離れた唇を追うように切ない顔をする雄吾さん。 「ヤダじゃねぇわ。琉生くんと宮くんに先輩たち紹介もせずに盛んな!お前が誘ったくせに……」  創介さんはそのおでこを軽く弾くと俺たちの方を見て手招きをした。

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