「んーーーねっ？この感じ……思い出しません？」 「何がだよ？」 　ニヤニヤ笑う雄吾さんが莉音さんの方を向くと、莉音さんは不機嫌そうに目を細めながら缶ビールに口をつける。 「下ネタ話すだけで真っ赤になってキスもできなさそうなこの初々しい感じですよっ！」 「はぁ!?何……」 「莉音は今も下ネタ話せないけど付き合う頃からキスはしてた」 　睨まれても雄吾さんはにこにこして言うのを莉音さんが流そうとしても大和さんが特に表情も変えぬまま謎の暴露をした。 「おまっ……酔ってんのか？」 　中腰になったままヒクッと顔を動かす莉音さん。 「でも、未だにベロチューは好きなくせにヤダって泣……」 　ソファーにあったクッションを真っ赤な顔で引っ掴んだ莉音さんは思いっきり振りかぶって大和さんの顔面をクッションで叩く。 「んーと！琉生くんと宮くんだっけ？何食う？」 　思いっきり引き攣っている笑顔を見ながら俺たちはとりあえずそっと箸を伸ばした。 「えーぇ！エロ話したーいっ！」 「勝手にやってろ」 　莉音さんは雄吾さんも見ることなく俺たちに笑いかけて「どっち？」と手まり寿司を乗せてくれる。 「あ、じゃあ！準備っていつもどうしてますぅ？シャワー？それ……」 　首元まで真っ赤な莉音さんは膝立ちのまま雄吾さんの頭にまだ開けてもいないビールを投げつけた。 「痛っ……」 「お前が悪い」 　涙目で顔を上げた雄吾さんに水を渡して創介さんはため息を吐く。 　だが、しょぼんとする雄吾さんの頭を撫でるその顔はかなり穏やかで幸せそうだった。