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39、第5話「少しずつ」

「ごめんなぁ」  次の日、洗濯物を干しているとベランダに現れた雄吾さんがペコペコと頭を下げた。 「覚えてるんですか?」  手を止めて聞いてみると雄吾さんは眉を寄せて両手を合わせる。 「ほとんど覚えてねぇけど、創介と莉音先輩にくっそ怒られた。反省させられたから……」  ベランダの手摺りに背中を預けて息を吐く雄吾さんが何か色っぽい。  しかも、その鎖骨辺りに見えた赤い鬱血の痕に気づいて俺は無駄にタオルをバタバタと振った。 「相談には乗るよ!でも、煽るのは程々にしとくな」  手を振って仕切りの向こうに消えた雄吾さん。  煽ってくれなくていい、と言う隙もなくカラカラと窓が閉まる音がする。  だが、言おうとそっちを見たことでその手首も赤く痕が残っていることに気づいてしまった。 「え、身を持ってって……」  キスマークだけならまぁ、俺たちが帰った後……うん。って思った。莉音さんたちもそこに泊まったはずだけどな?  だが、あの手首の痕は……雄吾さんが言っていた“道具”というのを思い出す。 「……激しくね?」 「何が?」  呟いた俺の背後から声を掛けられてを跳ね上がった。  不思議そうな顔で立っている宮部。 「あ、いや……」  考えられる道具を思い浮かべてしまっていた俺は何となく後ろめたさを感じて宮部の顔が見れなかった。

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