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「……村瀬くん」
俺に寄り掛かったままの宮部がほぼ力の抜けた状態で口を開く。
「何?」
その姿を愛おしく思いながら聞くと、宮部は一度目を伏せてからゆっくりと開いた。
「……バイト行きたくないな」
「え……」
思いもしなかったセリフにうまく言葉が続かない。
「何か安心して……離れたくない」
そんなのを聞いて俺の心臓はドクンと心臓が音をたてる。
「お前……わざと?」
「え?」
「煽ってるって言うんだぞ?それ……」
「そうじゃな……っん」
返事を最後まで待っていることもできなかった。
何度目かのキスをして強く抱き締める。
「マジで行きたくなくなるじゃねぇか……」
呟くと宮部はためらうように俺の背中に手を伸ばした。
「でも、そろそろ行かなきゃ。オープンは十一時だけど開店準備あるし」
「お前、冷静かよ」
ちょっとムッとして体を離すと宮部は真っ赤な顔を隠すように慌てて立ち上がる。
「……ドキドキしてるよ?他事考えないとじっとしていられない程に」
チラッとこっちを見る姿にゴクッと唾を飲み込んで手を伸ばすと、宮部はスルリとすり抜けて部屋に走って行った。
「あの野郎……」
しゃがみ込んで深く息を吐く。
「っし……行くかっ!」
吐ききって勢いよく立ち上がると俺も部屋に戻ってバイトに向かう準備を始めた。
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