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スタッフルームでロッカーを開く。
隣同士の俺らは何となく背中合わせでお互いの着替えを目に入れないようにした。
「あ、おはよー!」
変に無言になっていた時、店内へと続く方のドアが開いて姿を見せたのは佐倉さん。
「遥斗、キッチ……」
「ん?キッチンペーパー?」
「あぁ」
奥の小窓が開いて顔を見せた店長は俺たちに気づいて言葉を途切れさせる。
佐倉さんが微笑んで尋ねると頷いて、俺たちの挨拶にも一応反応しただけで窓は閉まった。
「ふふっ、照れてる」
「照れ?」
「琉生くんたち来てるのに気づかず僕のこと“遥斗”って呼んじゃったからねぇ。あっちで一人身悶えてんじゃない?」
布巾のストックとキッチンペーパーを持った佐倉さんは楽しそうに笑う。
確かに名前で呼んでいた。
二人のプライベートでの空気を僅かに感じて少しドキドキする。
「きみたちはただの着替えなのに意識してるし!みんなかわいいねぇ!」
にこにこしながら佐倉さんは器用にドアを開けてまた店内へと戻っていった。
意識していると言われて見てしまった宮部はスラックスを穿いてグレーのシャツを羽織っただけの状態で、白いタンクトップの隙間から見える鎖骨がくっきり浮き出ているのが見えてドキッとする。
目が合った宮部も赤くなっていて俺たちはまた無言でお互いに背を向けて着替えを続けた。
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