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49、第6話「ステップアップ」

 風呂から上がるとパソコンの前に居た宮部は顔を上げてまたすぐ画面に目を戻す。 「レポートか?」  グラスにお茶を入れて宮部にも渡すと、 「うん、ありがとう」  宮部は微笑んでグラスを受け取った。  その姿を見ながらソファーに座ってまたキーボードを叩き始めた宮部を眺める。 「……急ぎか?」 「ん?早めに始めてるだけだから別に余裕はあるけど?」  返事を聞いてソファーから床に降りた。  テーブルに俺もグラスを置いてそこにあった教科書を目にしてみる。 「あ、俺には無理だ」  漢字のやけに多いそれを見て即ギブアップした。 「ふふ、村瀬くんがそんな法律に興味持って勉強始めたらちょっとびっくりするかな」  パタンとノートパソコンを閉じて微笑まれてちょっとおもしろくない。 「うっせ」  その脇腹を掴んでやると宮部がビクッと跳ねる。 「へぇ……弱いのか」  ニヤリと笑うと宮部は慌てて距離を取ってこっちを睨んだ。 「当たり前だろ!」 「俺は平気だぞ?」 「……」 「やってみれば?」  両腕を横に広げて首を傾げると、宮部はかなりためらってからゆっくりと近づいてくる。  窺うようにそろりと伸ばされた手。 「な?」  笑ってやると宮部は更に脇を狙ってきた。 「お前、実は負けず嫌いだよな」  こっちに手を伸ばしていることで隙ができている脇を突いてやる。 「ふわぁっ!」 「ヤベ、ハマる」 「ハマんないでよっ!」  赤くなったその顔を見て腕を引いてやった。

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