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とりあえず洗濯機をかけて、宮部が作るような和食は無理な俺はトーストを準備しながら目玉焼きとウインナーをフライパンで焼いた。
洗ったレタスをちぎってから流しに手を付いてため息を吐く。
俺の部屋で……俺のベッドで寝ている宮部。
ふにゃりと緩んだあの顔が頭から離れない。
「……寝た……か?」
見えるはずはないのだが、キッチンのカウンターから部屋の方を覗いてみる。
部屋のドアさえ見えなければ物音も寝息も聞こえてこない。
トーストに母さんの手作りジャムを塗ってカウンターに置くと、宮部のようにうまくコーヒーを淹れられない俺は牛乳で誤魔化して同じように並べた。
いちごジャムのトーストに目玉焼きにウインナーとレタスとカフェオレ。
冷めるとは思いつつ、洗濯物を干してからにしようとカラカラと掃き出し窓を開ける。
「あ、おはよっ!今日お味噌汁の匂いしないけど宮くん調子悪いのか?」
「おはようございます。昨日寝てなくて今寝かせてるだけですよ」
先に洗濯物を干していた雄吾さんに言われて挨拶をしながらサンダルを履いた。
「え、寝てないって……」
雄吾さんの表情が期待に満ちていて俺は慌てて洗濯のカゴを置く。
「ちょっ、違いますよっ!」
「へぇ……」
ニヤニヤされてどうしたらいいのかわからない。
「違いますって!!」
俺はただ変に慌てて否定することしかできなかった。
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