「おい、いつまで……」 　低い声がして姿を見せた店長は黒い首元がV字のシンプルなトップスにただのジーンズで、制服しか見たことのない俺はいつもとは違う雰囲気の店長にビクッと震える。 「あはっ！一人は寂しかったの？琉生くん、お酒はまだダメでしょ？だから、ここで懇親会だよ！」 　パッと立ち上がった佐倉さんは思いっきり眉を寄せて睨むようにこっちを見ている店長の元に走っていってその首に背伸びをしながら腕を巻き付けた。 「やめろ」 　キスをしようと近づける口を制して店長は佐倉さんを退かそうとする。 　それでも佐倉さんは後頭部を引き寄せて無理矢理唇を押し付けた。 　チュッと触れてすぐに離れつつその耳元で何かを囁くと店長はピクッと肩を跳ねさせる。 「ねぇ……今、ここでレクチャーして欲しい？」 　こっちを振り返って微笑むその一気に色香を増した姿に心臓はヤバいくらい音を立てた。 　中性的というか女に近いように見えたのにその雄感にクラクラしてくる。 「はいはい、俺と琉生くんは帰るんで……程々に」 　トレーにグラスと皿などを乗せた創介さんはテーブルをサッと拭いてからカウンターの上にそれを置いた。 「うん、後はやっとくから」 　笑う姿はいつもの佐倉さんに見えるがその指が店長の頬を撫でた時、店長の顔にはわずかに朱が走る。 　恋人モードの二人を少し見てドキドキしながら創介さんに背中を押されて俺たちはスタッフルームに引き上げた。