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84、第10話「俺ららしく」
部屋で待つのもあからさま過ぎる気がして、リビングでお茶を用意して待つ。
やはり緊張しているのか、やたら喉が乾いて俺はもう何度キッチンとソファーを行き来しているだろうか。
「ヤベ……」
呟いてシンクの縁を握ったまましゃがみ込むと、音もなくドアが開いて跳ね上がる。
「……あ、お待たせ」
顔だけ覗かせた宮部の頬は赤く色づいていて、さっきは薄手の白シャツのみだったのになぜかグレーの襟付きシャツまで羽織ってきっちり首元までボタンが留まっていて笑ってしまった。
「宮部、お茶飲んでちょっと落ち着いたら?」
どう見たって緊張しているその手を引いてソファーに座らせる。グラスを握らせて、
「俺もシャワー浴びて来る、か?」
変な呟き方をしてしまうと、宮部はパッと俺のシャツの裾を掴んだ。
「無理……一人で待っていられない」
そんな上目遣い……ギュッと自分の腿をつねって耐える。
抱き締めてキスを落とすとすぐに離れて俺の部屋に目をやった。
それに気づいて俯いて、でも、しがみつくように立ち上がった宮部。
手を引くと、耳を赤くしたままちゃんとついてきた。
「いいのか?」
「そういうこと聞かないでよ」
気を遣ったつもりなのに宮部は顔を背けてしまう。
「読み取れって?でも、聞きてぇって。お前にも俺を求めて欲しいから」
「……準備してるって……そういうこと、じゃない?」
真っ赤なその顔を見て理性なんて吹っ飛びかけた。
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