94 / 117
94、第11話「いいんですよ」
「で?まだ未貫通ってことだよね?」
テーブルに肘をついてキョトンとするこのかわいらしい顔。
数時間前、佐倉さんから『お昼も出すから少し手伝ってー』なんてメッセージが届いた。
たまたま休講になった俺が店に顔を出すと、そこは確かに戦場のようで、キッチンでは店長と創介さんが、フロアでは添さんと佐倉さんが慌ただしく動き回っている。
一段落終えて、俺と創介さんはスタッフルームでランチをもらってもうくせになってしまった相談をしていた。
しかし、今回は伝票のストックを取りに来たはずの佐倉さんまで話に加わって……で、最初に戻る。
「そうですけど……」
食べ終えた皿を重ねてグラスを手にして、何となくその水滴をなぞった。
「そこまでいったなら一気に貫けばいいのに〜ぃ!」
「いやいや、それはサクさんの長年のテクとかセフレが先に準備してきてたとか……」
「店長にだって急に突っ込んだよ?」
「……悲惨」
顔を覆う創介さんとにこにこ笑っている佐倉さんに挟まれて俺はどうしたらいいのか。
このバイトがそもそも明け透けなのがよくない……最近の相談グセはもうこのバイトのせいにしていた。
「初で痛くないなんて無理なんだからさ。それより早く挿れちゃって気持ちよくしてあげる方がいいじゃん?」
「その痛みを少しでも和らげるとかあるじゃないですか」
「そんなん理性飛んでたからなぁ」
「酒が入ってたからってのと相手があの店長だからイケた荒業ですからね」
二人の速すぎるテンポと衝撃の言葉のせいで俺は全くついていけない。
ともだちにシェアしよう!