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「じゃあ、何?」
微笑みながら尋ねると、宮部はまた目を潤ませる。そして、
「村瀬くんはカッコよくて……バイトしてても買い物行ったって……色んな人が振り返るだろ?」
「そうか?」
「そうだよ。……その度に不安になる」
遂にポロッと涙が溢れると、次々に溢れ出して止まらない。
「そんなの……」
抱き締めて、でも、何と言ったらいいのかはわからなかった。
「だからね。……せめて繋がって……村瀬くんが……僕でも満足してくれることを確かめたかった」
言いながら宮部が腕を伸ばしてしがみついてくる。
「悪ぃ。不安にさせてたんだな」
俺も背中に回したその腕に力を込めてキツく抱き締めた。
「……なぁ」
フとその顔を覗き込みながら力を緩めると、宮部は眉を寄せたまま少しこっちを向く。
俺はその頬に軽くキスをすると笑って自分の親指にあるリングを抜いた。
そのまま宮部の左手を取って親指に、その宮部の手にはかなりゴツく見えるリングを嵌める。
指は細いが関節はしっかりしていてサイズは意外とピッタリだった。
「なぁ、リングってさ。左手の親指は“信念を貫いて目的を実現させる”って知ってるか?」
「え?」
キョトンとしながらリングを見つめていた宮部がゆっくり顔を上げる。
「俺が昔から着けてるリング!ピアス開けるのはちょっと……だろ?だから、お前と一緒に居る誓いとして……俺を常に感じてて?」
笑いながら宮部の指で光るそのリングをなぞった。
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