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「……所有の証?」
宮部はリングにそっと触れてこっちを見上げる。
「は?」
「古代エジプトでは結婚指輪は愛の証だったんだけど、古代ローマでは結婚指輪は多くの場合所有の証だったって……」
またリングに視線を戻して、宮部はそのリングにある溝をゆっくりなぞった。
「別に所有したい訳じゃ……」
「してくれていいけど?」
「お前な」
ふふっと笑った宮部の頭を抱き寄せる。
「……この違和感……いいかも」
リングを見つめる宮部の顔があまりにも嬉しそうで、こっちまでじんわりと胸が温かくなった。
「お前、指細いのにそのリングはゴツいから相当浮くけどな」
「そりゃ、村瀬くんがここに居るんだから」
微笑む宮部の顎を掴んでかわいすぎるその唇を塞ぐ。
「ふっ……んっ……」
鼻にかかるその声を聞くだけで色々止められなくなりそうになった。
焦るのはやめると言ったばかりなのに……できるならその素肌に触れたい。真っ白ですぐに赤く色づく肌に。
「……一緒に、風呂入る?」
「はぁ、んっ……へ?」
口から首筋に移動して舌を這わせると、宮部は吐息を吐きながら俺の髪には指を差し込んだ。
「……シたい」
「は?ちょっ……え!?」
焦る宮部がかわいすぎて、裾から手を差し込んでその胸を撫でる。
ただの“所有”なんかじゃ物足りない。
俺を宮部に刻み込んでやりたい。
俺の手でドロドロに乱してやりたい。
“焦らない”と“シたい”……どちらも本音だけど、今は少し宮部を感じたかった。
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