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宮部より一日早く俺は試験を全て終えて後は夏休みを待つだけになり、急いでバイトに向かった。
そういえば宮部の勉強の邪魔をしないためにバイトに入っていたから。
「お疲れ様です」
「お疲れ〜!何、テストそんなハードだった?」
バイトに顔を出すと佐倉さんが笑顔で出迎えてくれて、とりあえずその優しい笑みにホッとはした。
試験期間に合わせてバイトも減らしていたため、久々で少し緊張もしていたらしい。
「宮くんも元気?」
ポンッと肩を叩かれて跳ねてしまうと、佐倉さんとキッチンに居た創介さんに笑われた。
「その様子だと……まだ、だねぇ」
ニヤリとされて俺は曖昧に笑ってトレーにソーサーやスプーンをセットする。
「ん、Aの三」
創介さんが出してくれたコーヒーカップ二つとドーナツ二つを持って俺は逃げるようにフロアに向かった。
「あら、ルイくん大学の試験は終わったの?」
「はい!結果はちょっと不安ですけどねぇ!」
笑いながらテーブルにセットしていくと、常連の二人は微笑んで店内を見回す。
「勉強は大事だけどね。寂しかったわ」
「ルイくんもミヤくんも、もうこのお店にはなくてはならない存在でしょう?」
こんなこと言ってもらえるなんて……素直に嬉しい。
「宮部も明日試験終わるんで、確か明後日はバイト来ますよ」
「それは楽しみね」
常連さんの笑顔を見て俺はほっこりしながら仕事を続けた。
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