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第4話
氷のように冷たいあの部屋で、フルを見つけた時に俺はこの子を守ってやりたいと言うか……ぎゅうぎゅうに抱きしめてこの子供に降りかかるいろんなものから庇ってやりたいって気分になった。
父性だなんて、言わないけれど。
「……それ以外じゃ、まずいんだよなぁ」
すするコーヒーの苦さに自然と眉が寄る。
眠っている俺の尻に、フルがぐいぐいと股間を擦りつけていることに気づいたのはいつだったか……
最初は気まずさと、フルが大人の階段を上っているのを感じて嬉しくなっていたけれど、寝たふりを決め込むのがマナーかと素知らぬフリをしていた。
けれど声変わりにかすれた声で俺の名前を囁いているのを聞いた時に、フルが人肌じゃなくて俺で自慰をしているんだって気が付いて……
幼く無邪気な目が、いつの間に熱っぽい色を浮かべるようになったのかは覚えていないけれど、無表情に見えて多くを語る目を覗き込んでやればそこに浮かぶ感情を読み取るのは簡単だった。
浮かされるような、無防備なまでの一途にこちらを見つめる……
「…………はぁ、父親にんな目を向けんじゃねぇよ」
コーヒーをぐいっと飲み干して、いつもならすぐに食事の下準備に取り掛かるところだったけれど、どうにも体が動かない。
ともすればぼんやりとフルのことを考えてしまって……
フルの熱っぽい目は明らかに保護者を慕う色ではなくなっていて、それに見つめられるとどうにもイライラとした感情が頭を擡げる。
じりじりと追い立てられるような、ムズムズするような感じだ。
「…………」
卓上カレンダーを見て、クリスマスと印刷された文字の下に描かれた花丸に視線を投げた。
なんてことはない花丸なのにそのマークがやけに気に障って、イラつきのままに弾くようにして倒す。
ぱたんと柔らかな音を立てて倒れたカレンダーを眺めてから、ごそごそとズボンをずらした。
「さっさと一発抜いて寝ちまうか」
目を閉じて股間に手を伸ばすと、寒さに縮まっているちんぽを片手で包み込む。
コーヒーで温まったとは言えひやりとした手の感触に萎えかけたが、それでこのイライラが治まるわけではなかったためにそのまま緩く右手を上下に動かす。
イライラと、ムズムズと。
「 っ」
瞼の裏に誰を思い浮かべると言うわけではなかったけれど……
ともすれば胸の奥に焦れるような感情を呼び起こす息子の姿が浮かびそうになる。
「くっそっ! くっそちんちんイライラする!」
ぎりぎりと奥歯を噛み締めながら、それでもあの艶っぽいつんと突き出されたほくろのある口元が脳裏をかする。
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