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第5話
小さい頃は食い物で汚れたそれを拭きもしたそれは、今では黙らせるためにつまんだりするのだけれど……
指の間でふにふにと形を変えるそれは……
「フルの、口、は ゃ わらか いよな 」
歯を噛み締めたまま言葉を発したせいで、呻くような言葉だけが漏れた。
◇ ◇ ◇
乗り換え駅に着いた時、携帯電話に友人から休講になったと連絡が入った。
せっかくここまで出てきたのだけれど、今日はその授業しかない日だ。
はぁっと吐いた息に白いものが混じる。
空の雲は鉛色でやけに低くて……
大学の図書館で過ごすこともできたけれど、こんな冷え込む日はなんだか落ち着かない。
心細くて、寂しくて、苦しいと言うことはなかったけれど、心に隙間があったならそこにぴゅーぴゅー風が吹き込んでいるかのようだった。
もぞもぞと手袋を嵌めた手を握って、今頃二度寝しているかもしれない三太の隣に潜り込みたいなって強く思った。
寝てるといけないからそろりと鍵を開けてできるだけ静かに体を滑り込ませる。
俺がのびのび過ごせるようにって比較的防音のしっかりしたマンションの部屋の中は静まり返っていて……寝てるんだろうなってそろそろとリビングの戸に手をかけた。
「フルの」
押し殺したような声が俺の名前を呼ぶから、思わずくっと呼吸が止まった。
続けられた言葉に……
「 ────っ」
急に顔に血が集まって、思わず口を押える。
ふにふにとしたそれは、いつも三太につままれたものだ。
「 っ っ」
荒くなり始めた呼吸に突き動かされるように、リビングの戸を勢いよく開けて飛び込む。
俺の暴挙に飛び上がった三太が飛び上がって、ズボンをずらした状態でソファーから転がり落ちた。
「ぎゃっ!? なっ な、なにっ」
急なことに慌てて股間を押さえようとする三太の足の間に駆け寄って、拒否される前にさっと握ったままの右手に手を添える。
「な、な、なに、な、ちょ っ」
俺の手が冷たかったのか、三太はもう一度体を跳ねさせて慌ててオレから距離を取ろうと後ずさった。
「なん、なん、なん 」
慌てた三太は同じ言葉ばかり繰り返して……
俺は駄目押しとばかりにもう一度右手を掴んだ。
「俺っ!俺がっ する」
三太はぽかんとした後、「下の世話はまだ早ぇよ!」と大声を上げた。
「三太っ!」
更に大きな声で名前を呼ぶと、迫力に押されたのか間の抜けた顔で三太が固まる。
「さっ三太のおちんちん、触りたい」
「 っ!風呂で散々引っ張っただろうが!」
「それはっ子供の頃の話しだろ!」
ぐいっと押し退けようとしてくる手に逆らって、赤く潤んで右手からはみ出している先端に指を置く。
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