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第11話
「お前はもう、子供じゃない」
「う ん」
それはさんざん自分が主張してきた言葉だったのに、三太の口から聞くと二人の関係を否定されて突き放されたような感覚がして、ぎゅっと唇を噛んだ。
「ってことは、俺はもうお前の親である必要はない」
「っ!?」
当然のことを改めて突きつけられるのは思いの外衝撃で……
「ぁ、……でも、 ぇ……」
赤の他人の俺達から、親子だって部分を取っ払ってしまったら、もう何も繋がるものがなくて……
たまたま見つけた俺をここまで育ててくれたことだけでも、感謝しないといけないことなのは良くわかっているけど、それでも、関係ない人間だからと言われてしまうのは辛かった。
「フル、誕生日おめでとう。それから……」
それから?一人前になったからお別れ?
怯えて逃げ出したかったけど三太の手は力強くて許してくれない。
「それから、 お付き合いしてくださいっ」
ぎゅうぎゅうに握られた手にさらに力が籠り、伏せたままになっていた三太が真っ赤な顔を覗かせる。
「あっ……え……」
「どうなんだよ」
「ど ?」
どう?
どうって……
ぽかんとしていた俺に痺れを切らしたのか、三太は気まずそうに視線を逸らしてしまった。
耳まで真っ赤な姿をみながら、さっき三太が言った言葉を繰り返して……
「 ~~~~っ、なんだ?頭が冷えてどうでもよくなったか?」
むぅっと不機嫌そうに歪んだ唇は、呆れ返って説教をし出す直前の顔だ。
「ちがっ 違うよっ!」
飛び上がってそう言うと、三太は真っ赤な顔をへにゃりと歪ませてからへたり込んでしまう。
「三太っ!?」
カウンターを乗り越える勢いで身を乗り出すと、床に座り込んだ三太が困ったような顔で俺を見上げていた。
「あー……緊張した」
「な、何言ってんだよ、緊張したのは俺もだって」
「んぁ?なんで」
三太が両手を伸ばすから、イケナイことだとは分かっていてもそのままカウンターを乗り越えてぎゅっとしがみつく。
あの寒くて冷たくて独りだった部屋から、俺を連れ出してくれた腕が抱き締め返してくれて……
「三太にバイバイってされるかもって」
「なんだそりゃ」
揶揄うような口調なのに三太の手の力は緩むことはなくて、二人の間はぴたりと引っ付いたままだ。
「三太の中で、俺は息子のままかなって……」
「そりゃ、まぁ……あ、いや」
目尻に柔らかく皺を刻む三太の目が見下ろしてくる。
どんな時も俺を見て微笑んでくれていた表情は、見ているだけで胸の内をほっとさせてくれて……
「お前でうっかり勃っちまった段階でそんな訳ねぇのにな」
大きな手が頬を掴んでぐにぐにと揉み、そして観念したような笑いを漏らした。
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