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第23話 お泊まりの前に
僕は大きな駅の改札で待ち合わせていた。泊まりの荷物は、まぁ着替えだけだけど、リュックに入ってる。海斗はせっかくだから昼間はデートしようって言うから、こうやって待ってるって訳。
デートとか言われて、オシャレにうるさい姉貴から誕生日にもらったTシャツを着てみた。身体に沿ったTシャツは生地もしっかりしていてポップなアートがモノトーンで黒地に白でプリントされている。
見たてが良いのか、似合う気がした。ズボンはカーキのズボンの裾を少しロールアップして白いシューズにした。これ以上は僕もオシャレに関して自信がないから限界だった。
1週間前に美容院に行ったばかりの髪はいつもの様に前髪を真ん中で分けたマッシュ。前髪を分けたのは可愛いと言われがちな僕の、せめてもの抵抗なんだ。
沢山の人が待ち合わせしているこの場所で、不思議なことに海斗の姿はすぐに見つけられた。遠目でも目立つ背の高さや、ツーブロの短髪が男らしさ全開で、待ち合わせしている女の子達の視線を奪っている。
僕はちょっとモヤモヤしたけど、海斗が周囲を見渡してすぐに僕を見つけてくれた時の、嬉しそうな顔を見てすぐに吹き飛んでしまった。
僕たちはお互いに歩き寄って合流すると、直ぐに歩き出した。メッセージでは食べ歩きするって話だったけど…。僕が見上げると海斗が僕をチラッと見て少し赤らんだ顔で言った。
「洸太、今日決まってる。オシャレだな。」
僕は急に海斗に褒められて、ドキドキしてそっぽを向いて言った。
「でしょ。これ姉貴からの誕プレ。たぶん良いやつ。よく分かんないけど。」
すると海斗はクスクス笑って言った。
「多分良いやつってなんだよ。それ、人気のブランドだぞ?知らなかった?でも洸太のそう言う頓着無いところ、俺結構好きなんだ。それって、自分のこと信じてる気がするだろ?」
僕は全然そんな事ないって思った。だって男同士なのに海斗を好きになって良いのかって随分悩んだんだよ?まぁ、今は全然悩んでないけど。
僕は自分が大好きだって思ってる海斗を見上げて微笑んだ。
「ま、そう言う事にしておこうか。じゃあ、食べ歩き行こう?僕ここ来るの中1の頃、家族と来て以来だから久しぶりなんだよね。海斗は?」
僕たちは人混みに流されながら周囲を見回した。海斗は僕の腕を掴むと、ニヤッと笑って言った。
「俺も久しぶり。2年ぶり?迷子になりそうだから、洸太のこと捕まえていないとな。」
そう言って歩き出す海斗の耳が少し赤いのが僕には見えて、掴まれてる海斗の手の熱さも感じて、ちょっと胸が苦しくなったんだよ。
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