18 / 120
into u;18;苑
「本当に来るんだ、」
派手なジャージのままで、環は本当にやってきた。しかも関野先生も一緒に。
「ソノちゃん、誰か来てるの?」
「まあ…とりあえず上がってよ、来たんだし…でもあれだね、できたらその、仕事仕様の環でいる方がいいかもね」
「それもそうか…」
制服のまま来てるから、すぐに高校の生徒だってことは分かるはず。もう諦めるしかない。
環はさっさと洗面所に行ってしまった。
「あの、僕はここで、」
関野先生が遠慮がちに言った。
もうあざはなくなっている。
「せっかく来たんだから、お茶くらい飲んで帰って下さい。それで終わりです」
余計な一言をつけたのは、自分でもどうしてか分からなかった。
「…おじゃまします」
先にリビングに戻った。
都はぼんやりしてソファーに座ってる。
「都、大丈夫?」
「うん。食後の10分で俺は悟りを開いた」
「何を言ってんの?」
まあ現代っ子特有の長い脚を組んで、たしかに表情も王子様みたいに端正な雰囲気、なんか磨きがかかってる。
「ソノちゃ……ん、……え?」
リビングに入ってきた環は固まった。
ジャージから仕事着に変わってる。
「渡辺君…?」
都は大きく目を見開いた。
「どうして俺の名前知ってるんですか?」
「え!だって一緒に授業してるでしょ。すっごいきれいな髪色になってる…バターブロンドだ…いいなあ…」
「夏目先生は、受け持ってる生徒のことはみんな覚えてますか」
敬語喋ってんじゃん。俺にはタメ口のくせに…
「名前はみんな覚えてるよ。でも、1人1人を詳しく知ってるかと言われたら、怪しいかな…でも、渡辺君のことは分かるよ!すごく成績いいし、集中して授業受けてるし、あとはよく女の子に告白されてるのを見かけるから」
環はにっこり笑った。
「でも、その……大沢先生と仲良しなのは、知らなかった」
そう言って俺を見る環の目はめちゃくちゃ眼光鋭くて怖い……
「あー…環、ごはんは食べたの?あるけど食べる?関野先生も」
「食べる!けど、ちょっとまず大沢先生はこっち来てくれますか」
寝室に引っ張り込まれた。力が強い…
「電話してたとき、渡辺君じゃなくて違う人と一緒にいたよね?」
「え?どういうこと?」
「ソノ!って呼び捨てにしてる男の人」
「…あー」
「桂と付き合うんじゃなかったの、ソノちゃん!いつの間に恋人できたの、ねえ、」
環は大きな目を更に大きく見開いて、なんならちょっと泣きそうなくらい…
そんな他人の恋愛事情で熱くならなくても…と思うけど、そういうところも環の良さだと思ったり……
「それに、どうして渡辺君がここにいるの!」
……順を追って説明するより他ない。
ともだちにシェアしよう!