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「本当に来るんだ、」 派手なジャージのままで、環は本当にやってきた。しかも関野先生も一緒に。 「ソノちゃん、誰か来てるの?」 「まあ…とりあえず上がってよ、来たんだし…でもあれだね、できたらその、仕事仕様の環でいる方がいいかもね」 「それもそうか…」 制服のまま来てるから、すぐに高校の生徒だってことは分かるはず。もう諦めるしかない。 環はさっさと洗面所に行ってしまった。 「あの、僕はここで、」 関野先生が遠慮がちに言った。 もうあざはなくなっている。 「せっかく来たんだから、お茶くらい飲んで帰って下さい。それで終わりです」 余計な一言をつけたのは、自分でもどうしてか分からなかった。 「…おじゃまします」 先にリビングに戻った。 都はぼんやりしてソファーに座ってる。 「都、大丈夫?」 「うん。食後の10分で俺は悟りを開いた」 「何を言ってんの?」 まあ現代っ子特有の長い脚を組んで、たしかに表情も王子様みたいに端正な雰囲気、なんか磨きがかかってる。 「ソノちゃ……ん、……え?」 リビングに入ってきた環は固まった。 ジャージから仕事着に変わってる。 「渡辺君…?」 都は大きく目を見開いた。 「どうして俺の名前知ってるんですか?」 「え!だって一緒に授業してるでしょ。すっごいきれいな髪色になってる…バターブロンドだ…いいなあ…」 「夏目先生は、受け持ってる生徒のことはみんな覚えてますか」 敬語喋ってんじゃん。俺にはタメ口のくせに… 「名前はみんな覚えてるよ。でも、1人1人を詳しく知ってるかと言われたら、怪しいかな…でも、渡辺君のことは分かるよ!すごく成績いいし、集中して授業受けてるし、あとはよく女の子に告白されてるのを見かけるから」 環はにっこり笑った。 「でも、その……大沢先生と仲良しなのは、知らなかった」 そう言って俺を見る環の目はめちゃくちゃ眼光鋭くて怖い…… 「あー…環、ごはんは食べたの?あるけど食べる?関野先生も」 「食べる!けど、ちょっとまず大沢先生はこっち来てくれますか」 寝室に引っ張り込まれた。力が強い… 「電話してたとき、渡辺君じゃなくて違う人と一緒にいたよね?」 「え?どういうこと?」 「ソノ!って呼び捨てにしてる男の人」 「…あー」 「桂と付き合うんじゃなかったの、ソノちゃん!いつの間に恋人できたの、ねえ、」 環は大きな目を更に大きく見開いて、なんならちょっと泣きそうなくらい… そんな他人の恋愛事情で熱くならなくても…と思うけど、そういうところも環の良さだと思ったり…… 「それに、どうして渡辺君がここにいるの!」 ……順を追って説明するより他ない。

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