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into u;22;苑
誰もいなくなった。
ソファーにうつ伏せに寝転んだ。さっき起こったことを頭の中で思い返した。
なんでか分からないけど涙が出た。
「ソノちゃん、」
環の声で目が覚めた。
「大丈夫?」
「あー……」
ソファーから体を起こして座った。
「浮腫んでる…昨日ここで寝ちゃったの?」
「そうだね」
「桂とあの後話した?」
「話したよ」
もう遅い朝だった。
環はコーヒーを持って来てくれた。ソファーに並んで座って飲んだ。
「付き合えないって言った」
「……なんで?」
「あの人と付き合うと、きっと毎日がストレスになる」
「え、なんで?」
「多分、俺が嫉妬ばっかりするから」
環は困ったような顔をした。
「だからって、ふったの?」
「うん」
「桂、どう言ってた?」
「笑ってた」
「……ソノちゃんがそれでよかったならいいけど、でも、…桂、きっとすぐに彼女できるよ。いいの?後悔しない?」
マグカップをローテーブルに置いた。
環は覗き込むように俺の顔を見た。
「同期の先生がね、桂のことしょっちゅう誘うの、飲み会。1人の女の子がすごく桂を好きなんだって。今度会ったときにはもう付き合ってるよ、って、言ってた」
「…そう」
それならそれで良かった。むしろその方が、
「ソファーで不貞寝して、泣いて目腫らすくらい好きなのに?」
「環にさえ嫉妬しそうになるかもしれない」
「いいじゃん別に、嫉妬して、桂にわがままいっぱい言えばいいんだよ」
「困るだろ」
「やってみなきゃ分かんないでしょ?わたしは、桂はそんなことで怒ったりしないと思う」
「でももう遅い。断ったんだから」
「遅くない!ソノちゃん、」
環に強くハグされた。
髪をぐしゃぐしゃ撫でられて、背中をバシバシ叩かれた。
「一世一代の恋だよっ、」
なんで勝手に一世一代ってことにされてんだ…!
「……顔洗ってくる」
環の柔らかい黒髪を撫でて、立ち上がった。
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