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into u;23;苑

今更泣いて縋るのは嫌だ 子供みたいだ。情けないって分かってる。だけど、どうしてもできない。 環も、初対面だったはずの都でさえも、あの人とはすぐに打ち解けていた。 本当は俺だってそうなりたかった。素直に腕を広げて、好きだとか、かわいいだとか、そういう甘い言葉にただただ溺れたかった。 女の子と付き合うと、きっとその甘さはもっと増すだろう。柔らかい体をすっぽり包んで、まるでガラス細工を扱うみたいに優しく、大切に大切にその関係を築いていくのだろう。 なんだかよくわからないけど、想像できる。 鏡に映る顔は疲れ切ったただの男で、柔らかくもなんともない、かわいくもない、きれいでもない。 こんなもん、どこが好きって言える?なにがかわいい?あー、あの人の目は濁ってたんだ。 環の方がかわいい。 付き合うだろうって女の子もきっとかわいい。 「ソノちゃん?」 鏡に環が映った。 隣に並ぶ。 「絶対伝えた方がいいよ。だってソノちゃん泣いてる」 「…ほんとだね、」 「こんなに好きになるとか、いいなあ」 「素直に喜べないよ、こんなみじめったらしい…」 「どこが?こういうのが尊いって言うんだよきっと。好きな人を思って、悩んで拗らせて」 「拗らせたくない」 「大丈夫。もう十分拗らせてるよ!」 環は大きく口を開けてけらけら笑った。 「わたし、連休初日だし昼寝する」 「はい?」 「だからソノちゃんは桂のところに行くか、リビングで電話するかしたらいいかもね」 「…うん」 「色々終わったら、ドライブ行きたい」 「そうだね」 「待ってるね」 背中をぽんぽんされた。それから環は寝室に行ってしまった。 もう一度顔を洗った。 それからリビングに戻って、スマホを手に取った。

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