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swear;37;環

心臓が爆発しそうだった。 どきどきする音がずっと聞こえてる気がする。 人生で初めてのキスだった。 渡辺君と同級生だったら、…先輩でも後輩でもなんでもいい…、近い関係だったら、きっとあの時、自分から腕を伸ばしてた そんなふうに意識して渡辺君のことを見たことなんて一切なくて、ただ、ひとりの生徒としてしか見てなかった。 彼はいつ、どうして好きだと思ったんだろう? 渡辺君はソノちゃんみたいに、男性を好きになる人なのだろうか? だとしたら、わたしは…? あまりにも分からないことだらけ ベッドに横になって目を閉じても、抱きしめられてキスされた時の光景とか、息遣いとか、唇が触れ合って鳴った音とか、におい、雨の音、そういうので頭の中がいっぱいになって眠れない。 分からない、って理性的に考えようとしているだけで本当は、またああいうことしてみたいって思ってる、 ……と、全部打ち明けた。ソノちゃんに。 休み明けの出勤初日、ぴったり定時に保健室に駆け込んで、なんだよびっくりした、って怪訝そうなソノちゃんに捲したてるように話した。 「………ほう…」 ソノちゃんは探偵さんみたいに顎に手を当てた。 「そうか、都の好きな人は環だったか」 「え、」 「ついさっき聞いた。好きな人の前で取り乱して、抱きついてキスしたって。これからもずっと好きだって」 「……うう…」 「正直、俺は先生と生徒はないと思う。ダメだよね。ここの教諭もそれで辞めたんでしょ?仕事も碌にせずに」 「だね…」 「なんとなくだけど、都はその辺の分別はあったんだと思うよ。俺と環がいとこだって知ってるはずなのに、誰が好きなのか言わなかったし。たまたまそういうシチュエーションになったから我慢できなかったんじゃない?若気の至り」 「うん、」 若気の至り、 「環が我慢しなきゃだめなのはあと半年くらいじゃん」 「どういうこと?」 「都が卒業したら、別に問題ない」 「あるよ!いろんな面である!!」 「考える時間と思えばいいじゃん。別に都に執着する必要もないんだから、その場合はもう今すぐにでも動けばいいし」 「今すぐ…?」 「いいなって思ったんでしょ?ハグしたりキスするの、いいなーって」 「………思ったよ…けど…わかんない、いろいろ…」 渡辺君としたいのか、違う人とでもと思うのか 見た目通りの性別で恋愛すべきなのか、 本当の自分を明かして恋愛すべきなのか、 「ゆっくり考えたら?考えなくていいってこともあるかもしれないけど」 ばしばし肩を叩かれた。 「環は俺の背中を押してくれた」 「え?そうかな」 「そうだよ。だから次は俺の番。ひとりで悩みすぎるのはやめて、話して整理できるならいつでも話そう」 「……ソノちゃん…」 うるっときた。 やっぱりソノちゃんがいなきゃだ! 「ソノちゃん〜〜」 両手を握った。にぎにぎして、されて 「泣くなよ、なんかつられそうになるから」 「泣かないよ、我慢する!あ、そうだ、あれだ、一日中好きにされるやつどうなった?」 「……今日どうする?木曜だけどせっかくだし晩ご飯一緒に食べる?」 「はぐらかさないでよ。食べる」

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