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swear;39;環
桂のもう一つの勤務先のジムはとってもきれいで、体育会系とは遠い性質のわたし…体育会系じゃないのにどうしてテニス部の顧問なんだろ?…にとっても居心地のいい雰囲気だった。
いろんなマシンとかが置いてあるオープンな場所もあるし、個室みたいなのもある。
ソノちゃんとわたしは、まずフロントに向かって更衣室のロッカーキーを貰った。
ふたりで更衣室に向かっていたら、桂が早足でこっちに来た。
…スタッフの人の格好だ!
部活の時と違って、なんかすごくスマートな感じがする…!チャコールグレーのピタッとした
トレーニングシャツと、ハーフパンツの下は、いかにもトレーニングします!!って感じのピタッとしたやつをはいてる。なんていう名前の服か知らない。スパッツ?
「おーい!こっちこっち」
桂は更衣室と反対を指さしている。
「更衣室ってあっちじゃないの?」
「トレーニングするのはこっちの部屋だから、そのまま来てくれていいよ」
案内されたのは、ソノちゃんちの寝室くらい広い(ソノちゃんちは寝室もかなり広い)部屋だった。マシンが3つくらい、それからヨガマットも敷いてあるし、バランスボールとか、色々ある部屋だった。
「すごいね!なんか色々ある!」
「1番いい部屋おさえといたからね」
「さすが桂だ〜!ソノちゃん愛されてるねえ」
「……そういうこと…?」
「そうでしょー!いいなあ〜」
「環、ここで着替えたらいいよ」
桂は端の方にあるカーテンで囲まれたスペースを案内してくれた。
ありがとう、って素直にそのスペースで着替えた。ぱたん、ってドアが閉まる音がした。
ふたりは、本当のわたしのことを『わたし』だと思ってくれてるんだ!って、改めて思う。嬉しい。本当に、本当に嬉しい。
前に桂にもらったジャージのパンツと、動きやすいTシャツに着替えた。
少ししたら、ばたん!ってドアの音と同時にソノちゃんが勢いよく入ってきた。
「ど、どうしたの?」
「……嫉妬はだめって分かってんだけどさ」
「嫉妬?」
「多分、桂のお客さんだろうね。俺たちよりちょっと年上かなーくらいの女性。すごい親しげに話しかけに来てスキンシップも多い。好きって感じが分かるわけ、初見の俺でも。滲み出てんの」
「だいぶだねえ…」
「やばいよ。下心あるよあれ。虎視眈々と狙ってんだよ。服の感じとかやばいじゃん」
「その女の人が?」
「あ、女の人もまあまああれだったけどさ、そうじゃなくて桂!」
「桂?」
「下心抱くやついっぱいいるだろ!あんなん見たら!!」
「桂に?」
「そう!」
「ソノちゃんは桂見て下心抱いちゃうの?」
ソノちゃんは固まって、真っ赤になった。
「……あー」
「桂のこと大好きだもんね」
「…や、そういうことじゃないんだけど」
「えー?好きじゃん、そうでしょ?」
お待たせ!って桂が戻ってきた。
ただならぬソノちゃんの不機嫌そうな表情を見て、桂は何かを察したみたい。柔らかく笑いながら、怪訝そうなソノちゃんを抱きしめた。
「なにすんの…!」
「かわいかったから、ついハグしちゃう」
「うるさいな」
………めちゃくちゃうらやましい。
ソノちゃんはそれから、ものすごい勢いでトレーニングを始めた。なんでか分かんないけど、桂から教わった通りの方法で、ひたすらストイックにマシンに取り組んでいる…
わたしはバランスボールを使ったストレッチの方法を教わって楽しく取り組んだ。
「そのさん、運動好きなの?」
「えー、どうかなあ…そんな積極的にする感じでもなかったけど…でも、すごい重そうなの持ち上げてるね…」
「明日大丈夫かな筋肉痛…」
桂は心配そうな顔をしながら、ソノちゃんの方に向かった。
私もあんな恋人がほしい、
結局そこに至るんだよなあーって思いながらぼよんぼよんはねた。
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