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前に夏目先生が分けてくれたサンドイッチとかを売ってるコーヒーショップに行って、でかいクッキーをひとつ買った。ホワイトチョコとマカダミアナッツが入ってるやつ。
付箋に「ありがとうございました」って書いて貼り付けた。字に納得いかなくて何回も書き直した挙句の付箋。
夏休み最後の日、カーディガンとクッキーを持って職員室に行った。
「あの、夏目先生いらっしゃいますか」
……どう見てもいなかった。
「夏目ならテニス部行ってんじゃないかなー。気分転換してくるって言ってたよ」
英コミュの竹井先生が、うーん!って伸びをしながら教えてくれた。うわ、大あくびしてる。
「ありがとうございます」
「はいよー」
ひらひら手を振って、めちゃいい笑顔見せてくれた。なんか元気でる。手を振り返した。
テニス部って、テニスコート行きゃいいのかな…
なんとなく校舎の外に出て、授業で数回しか行ったことのないテニスコートの方に向かった。
いっぱい素振りしてる人がいる。
あ、桂先生がいる。
えー、めちゃかっこいいなー。前に会った時と印象が違う。前は優しい雰囲気に思えたけど、今日はキリッとしてるというか、ほんとかっこいい。
っていうかテニスコート広いな!
俺から見て左側が男子で、右側が女子。全部合わせたら結構な人数に見える。
「おーい、みやこー!」
クラスの女子がいる。こっちに走ってきた。
「なにしてんの?」
「人探しに来た」
「へー、テニス部に?」
「そう」
「っていうかめちゃ派手じゃん髪」
「うん。夏だし」
「似合ってる」
「ありがとう」
「それコーヒー?」
紙袋を指さして聞かれた。
「クッキー」
「あー!おいしいやつじゃんいいなー。一口ちょうだい」
「やだ」
つめたー、って言いながら笑われた。
「練習しなくていいの?」
「もう引退だしね。あ、あの子」
ラケットで指された先には、右に左に動きながらボールを打ち返してる女の子がいる。
「みやこのこと好きだって言ってたよ」
「……そういうの良くないって」
「結構な人数の女子が、みやこの彼女が誰になるか気にしてんだから」
「まじで余計なお世話」
「まあまあ〜満更でもないでしょ」
「何言ってんのほんと…」
「私でもいいよ付き合うの」
「ない」
「分かってまーす!じゃあね」
手を振り返した。
また明日からこうやって、彼女がどうだの、あの子が好きって言ってるだの、なんか呼び出されてどうこう……
男子テニス部の方を見たら、屋根のあるベンチのところに集まってる。輪の中心には桂先生。と、夏目先生がいた。多分アイスを配ってる。
夏目先生から受け取ってる部員が羨ましい。
先生は遠目にもにこにこ笑ってるのが分かる。あんな笑顔で見つめられながら手渡されるとか良すぎだろ
…遠くから好きだって思い続ける
遠くから、っていうのが重要。そばには行けない。行ったらまた、歯止めが効かなくなるかもしれないし。でも服は返さないとだし、…やっぱり、もう一回ソノに頼みに行こう…
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