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anxiety Xmas;55;桂

「おいしかった〜!ごちそうさまでした」 そのさんは猫みたいに目を細めた。 なんてかわいいんだろう!って、思わず頬がゆるむ。 今日は、ジムではなんにも一緒にできなかった。すごく申し訳ないことをしてしまった。 でも、ああやってスタッフと楽しそうに話してる姿を見れたのは、ちょっとレアだなと思った。そのさんがよそ行きの雰囲気で社交的に話すときって本当に美しくて惚れ惚れする。 …けど、彼女がなんとかーって言ってたのはなんだったんだろう……気になる… 「桂ってさ、年末年始はいつもどうしてる?」 「んー、なにもないと実家帰ってるかな」 「そうなんだ」 「そのさんは?」 「俺はもうほとんど家族とは連絡取らないから、いつも環とすごしてる」 「そっか」 「今年の正月休みは長いから、しばらく会わないね」 そのさんは唇をへの字にした。 「会わない日が続いたら、……」 「…ん?」 覗き込むように目を見た。真っ黒い瞳が落ち着かずにゆらゆら動く。 「……もっと好きになりそうだね、なんていうか、会いたいって思ってさ」 ………なんて事言うの!なんてかわいいの!! 顔真っ赤になってるし!! 「な、無かったことにして今の」 「できるわけないでしょ〜!!」 彼女がなんとかって話、かなりどうでもいい。 それくらい今のそのさんは可愛くて最高で、完全に俺のことを好いてくれてるんじゃん!!みたいな、むちゃくちゃ嬉しい。 そのさんの家みたいに広くない1LDKの我が家だから、ダイニングテーブルなんて置いていない。ローテーブルに2人掛けのソファー。 だからすぐに横から抱きしめることができる。 んん、って唸って顰めっ面するけど構わない。たくさん頬擦りした。 「あああ……そのさん、」 「なんだよ」 「離れたくないよ、1週間も離れたらさみしい」 「家族は大切じゃん。俺はまあ、あれだけど…でも、環のこと大切だもん」 「まあ…そうだけどね、家族、大切だと思うけど」 「だから帰省してよ、深く考えないで、いつも通りにして」 「…じゃあ、半分帰省する。あとは一緒にいたい」 「んん、」 真っ赤になった耳に、唇で軽く触った。 体を捩るけど、まだまだ俺の方が腕力がある。 ふざけて戯れている間に見える、ふとした瞬間の目だとか、横顔、唇、そういうのに我慢ができなくなる。好きで好きで堪らない。 「苑」 そう呼んだときにはもう、茹ってしまったみたいになっていて、潤んだ目でこっちを見てる。 求める全てに応えたくて、肌を触れ合わせた。

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