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anxiety Xmas;57;桂

クリスマスまであと1週間。時間が経つのは早い。 部活が終わって、鍵を返しに職員室に寄った。 今日はデスクに向かっていた環は顔を上げた。 「お疲れ様」 「大変だね、学期末」 「ねー。でもひと段落したし帰る」 「関野!!」 竹井だ。声でかすぎだろ… 「ゆきちゃんさあ、」 「もういいよゆきちゃんの話題は…」 腕を引っ張られる。 「竹井、ここ職員室なんですけど」 「夏目厳しすぎるだろ」 「普通です」 「わかったよっ」 環の視線が痛い… 腕を組んで、給湯室みたいなとこに引っ張り込まれた。こんなとこあったんだ。 「ゆきちゃん、ジム通うって話」 「へー、どこの?」 「お前んとこのだよ!」 「えっ!なんで知ってんの?俺、店名まで言ってなくない?」 「ん?」 「……竹井」 「ん?」 「言ったわけ?」 「聞かれたんだもん仕方なくない!?」 「いやいやいや…」 「お客さんで行く分にはさあ、別にあれじゃん、後ろめたいことないじゃん」 「そうかもしれないけどさあ」 「よろしく!」 「なにがよろしくだよ…」 「鍛えてあげて!」 バシバシ叩かれて、なっ!とか言われたけど普通に気まずいよ…堂々としてりゃいいんだろうけどさ… こんこんこん、と入り口で音がして見たら、環がこちらを見ている。 「桂、お先に」 「ちょっと夏目、俺にも言ってよ寂しいじゃん」 「竹井はうるさいから嫌」 「なんだよっ、同期じゃん親友じゃん」 そう言いながら、竹井は環の肩を抱いた。 「そんな怒った顔しないでよ夏目〜」 「怒ってない」 「にこってしてよ、癒してよ俺のことまだ仕事しなきゃなんだから」 「遊んでるから遅いんだ。どれくらい残ってんの?」 「まだ採点全然終わってない」 「はあ!?なんで?」 「なんでだろうなー?ほらー、癒しー」 環は揺さぶられながら、変な作り笑顔をした。 「なんじゃそれ!夏目なのに可愛くねえ」 「うるせえ」 わさわさわさ、って竹井の頭を環が撫でている… 「残業がんばれー」 「頑張るー。お疲れ!」 環がわかりやすく女の子だったら、きっと竹井はこうはしていないと思う。男で、仲のいい同期だからやったことだ。 なんかこう、複雑な思いになる。 竹井が悪いわけじゃない。だけど、環は大丈夫なんだろうか、 「ソノちゃん、まだいるっぽいから保健室寄って帰ろっか」 「そうだね」 「……さっきの、変だった?」 「あー…竹井?」 「うん。桂、すごい顔で見てたから」 「え!あ…ごめん、気ぃ悪いよね」 「ううん、そんなことないよ!なんかさあ、男っぽく振る舞うぞ!って思って動くでしょ?後になって、あれって合ってたかなあ?って考えちゃうことあるんだー」 「男友達とわーわーやってるとき、俺もあんな感じだよ」 「そう?じゃあ良かった」 「すっごい余計なお世話かもなんだけど、その、肩とか組まれても、うわ!ってならない?平気?」 「へへ、大丈夫大丈夫。そんなもんだって思ってるからさ。特に竹井はそういう感じだもんね、雑なんだよ触り方が。桂と正反対だよ!」 「え、優しかったらいいの、竹井」 「えー?それは好みかどうかみたいな話?」 保健室に着いて、環は軽くノックしたら返事も待たずにドアを開けて入った。 「んーーー、好み…うーーん……まあ、割とかっこいい部類ではあるし遊ぶと楽しそうだけど……んーー…あ、」 都がいる。なんだか久しぶりに会った! 髪が真っ黒になって、更に少し伸びてる気がする。 「都だ!久しぶりだね」 「桂先生!」 なぜか両腕広げて近づいてくる。あー、案の定だ、案の定ハグだ。 「わーーーやっぱりデッサンだこれ」 「いやいや、そんなことないから」 都はすっと顔を上げて、環を見た。 環はなんか分かんないけど強張ってるように見える。 「夏目先生」 「あー…授業で会ったね、さっき」 「桂先生となんの話してたんですか?」 「ああ、環の同期の竹井っていうのがさ」 「英コミュの」 「そうそう。なんていうかな…雑なスキンシップをしてくる奴なんだけど、そういうのは受け入れられるか?的な話」 ふとデスクに向かっていたそのさんに目が行く。すごく軽蔑の眼差しでこちらを見ている気がする…!! 「へー」 ………なに、みんなすごくピリピリしてない…?

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