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anxiety Xmas;60;苑
昼休み。都は分かりやすく頭を抱えている。
「………え、どうしたらいいんだろう」
今までにない落ち込みっぷりだった。
どうフォローするか悩ましいな…
「環、それだけお前のこと好きだってことじゃん!」
「でももう終わったことになってんでしょ?話、なんて言って終わったの?」
「わんわん泣いて、こんな歳の差があるんだから有り得ないって自分に言い聞かせて、落ち着いたらまた誰か好きになれたらいいな、って前向きなコメントを残したあとめちゃくちゃ晩ご飯食べてた」
「ほら終わってんじゃん」
「まあまあ、指輪あげるんでしょ?そこでネタバラシってことにすればよくない?」
「でも終わった感じじゃん」
「あげたときに、ああ、だから指輪着けてたんだ、恋人できたんじゃなかったんだ!ってなるじゃん」
「終わったって思ってる人に、指輪なんかあげられるわけないよね」
イラッとくるなこれ…
「…そうだね。お前がそう思うならそれでいいんじゃないの」
「なにその言い方」
大人気ない。けど、思わず口にしてしまった。
「都がもう終わったって思うんならさ、また新しく始めるしかないじゃんね。春から大学行くんだろ?新しい出会いは嫌でもいっぱいあるよ。好きだって思う人も出てくるだろ」
「でも俺は、」
「どうして環にこだわる?教諭だから憧れみたいなとこがあったんじゃない?だとしたらそれって恋愛感情じゃないじゃん、憧れだよ単なる。違う?」
言い返して欲しかったし、諦めてほしくもあった。真逆の思いが入り混じってる。
「……憧れだけでキスしたのかな俺、あの時」
「どうだろうね」
「もう、夏目先生は待っててくれないかな」
「さあ、分からない」
「困らせるだけだと思う?俺がしつこくしたら」
「しつこくしないから、こんなことになったんじゃない?」
唇を噛んで、前髪をかき上げた。
むすっとした顔だけど、大人びてる。
「……しつこくしたら、嫌われるじゃんね。今、ただでさえもう、終わってんだから」
「じゃあ終わりだ終わり!いいじゃん、貴重な経験したじゃん。なかなかないよ?先生とちゅーするとか。すごい思い出だ。思い出ついでに、サイズ測ったリボン持っときな」
リボンを都の手のひらに押し付けた。
もう、一回終わってしまえばいいと思った。
都も環もぐずぐずしてる。そんなんならもう終わればいい。
本当に好きで忘れられないなら、その時にまた始めたっていいんだから。
ふたりにとって俺は、嫌な奴かもしれない。
だけど、それでいい。ふたりが前を向けるなら、別に悪役だっていい。
「クリスマス、ソノはなにすんの?」
「デート」
「待ってひどくない?俺今失恋真っ只中なのに、そんなこと言うんだ」
「だって聞いてくるから!」
「はーーー…俺もデートするか…」
「誰とすんの?」
「なんか、誘われたらその人と」
「あーあ、むかつくわーモテる奴」
「だって誘われてるんだから何も悪くないじゃん!」
「そうだけどさ!…でも、いいかもね」
「……言わないでよいいとか」
「デートしたら、相手のこと好きになるかもしれないじゃん」
「怒られたいんだよ、俺、ソノに!」
「めんどくさいよ」
「おいっ、ソノ!!」
「…あーー、ちょっと待ってろ」
スマホを手に取った。
桂にメッセージ。
『部活の前、早く来れたりする?保健室』
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