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anxiety Xmas;72;環

映画館の前の大きなクリスマスツリーも、デートしてるんだろうなって人達でたくさんだった。 「先生」 「なに?」 「…今だけ、環さんって呼んでいい?」 「な、なんでっ」 「卒業してちゃんと付き合ったら、名前で呼びたいから練習すんの」 「練習いる?名前呼ぶのに」 「いるよ。覚悟が必要。俺はずっと苗字で呼ばれるの?」 指を絡ませて、少し力を込められた。 首、汗かいてる気がする… 「俺、一方的に言っちゃってるけど、付き合えると思ってていいんだよね?」 「んん……」 「いいよね?返事聞きたい。ちゃんと言って下さい」 マフラーが暑すぎる…コート脱いじゃいたい… 「歳が、」 「歳?」 「離れすぎてるし」 「気にならないって!」 「見た目も、」 「さっきナンパしたでしょ!!変な話見た目から好きになったんだってば」 抱きしめられた。人前で…! 耳元に息遣いを感じる。 どきどきしすぎて、背中とか汗が滲んでる気がする。汗くさくなっちゃいそう、やばい、 「予告編やってる時、前通ったでしょ?すごいいい匂いするって思った。こんなにかわいくていい匂いして、正直もう、今だいぶ我慢してるもん。もしこのままふたりきりになれたらって、想像しただけでやばい」 脈打つ音が体中鳴り響いてる 「言ってよ、待ってるって」 全身、鳥肌が立った。 「…待ってる、卒業するまで、」 「…言ったよ?言ったからね。環」 「よ、呼び捨て」 「環さん、の方がいい?」 「どっちでも、いいけど」 「俺のことは?」 「ええ…」 「ずっと渡辺って呼ぶの?」 「み、都くん」 バッ!と体が離れた… 渡辺君はなんだか急に幼い雰囲気になって、ふにゃふにゃ笑った。さっきまでとのギャップがすごい… 「なんか!背徳感あるね!!」 「なんでよ!!」 「美人な年上の恋人から君付けで名前呼ばれるの、なんか…なんかいいね!!」 「こ、声がおっきいっ」 「へへ」 高校生ってことを忘れてしまいそうだけど、離れて見たら、制服にダッフルコート着てて…やっぱり高校生なんだなあって思う。 「環、写真撮りたい」 ナチュラルに呼び捨てにしてくるじゃん… ツリーを背景に、肩を抱き寄せられてぎゅって密着する… 「まだ付き合ってない、」 「クリスマスだからいいの。ほら、笑って」 何枚か撮られる。 すごくすごくかっこいい渡辺君の隣に、うまく笑えないわたしが写る。だけど、この写真は私もほしい、 「写真送るから、連絡先教えてくれる?」 「連絡先……」 頭の中で、教えちゃってもいいじゃんって言うわたしと、まだ生徒なんだからだめでしょって言うわたしがせめぎ合ってる… 「……だめだよね、大丈夫、ダメ元で聞いただけだから。ソノに送って、ソノから写真送ってもらうようにお願いしとくね」 「なんでソノちゃんの連絡先知ってんの?」 「聞いたんだー。ほら、桂先生が執事した時に、写真撮ってソノに送るってことになって」 ……ソノちゃんめ… 「でも、卒業したらすぐに連絡先教えてね」 「….わかった」 手が繋がった。わたしも指先に力を込めた。

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