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anxiety Xmas;78;桂
部活終わり、そのさんの家に向かう途中『アルコール切らしてた!買ってきてくれる?』とメッセージが来た。
こういうことに喜びを感じる。そのさんとの距離は当たり前に近づいてるんだなって実感できるから。
最寄駅のそばのスーパーに入る。
そのさんはハイボールを、環は弱くて甘いチューハイを飲むだろう。つい色々カゴに入れてしまうけど、今日飲み切らなくてもいいし…と思いつくままに買い込んだ。
家の前まで来て、鍵を開けて入る。
「ただいま」
「おかえり。おー、いっぱい買ってる」
「飲むでしょ今日は」
「だね、祝杯」
ダイニングテーブルにレジ袋を置いて、洗面所まで手を洗いに行って、それからキッチンにいるそのさんを後ろから抱きしめた。
「危ないよ、包丁」
包丁はまな板の上にある。
「持ってないじゃん」
「刺しちゃうかもしんない、うわ!って咄嗟に」
「そんなことできないでしょ」
思い切りすりすりして、それから耳元に唇を寄せた。わざと音を立てたら、そのさんはぶるぶる震える。
「んん、」
「きもちいい?」
「くすぐったい、」
触れそうで触れない距離で息を吹きかける。
「やめ、あっ、」
思わず笑ってしまう!
首も耳も真っ赤になってる。そのあたりに何回かキスしたら、腕に力を込めて顔を擦り寄せた。
「そのさん、かわいい」
「…ん」
「大好きだよ」
「……ごはん作れない…」
腕を緩めて、隣に立った。
「罪深いかわいさだな」
「何言ってんの」
棘のある言い方をしてくる。でも赤みは全然引いてない。少し突き出た唇。じとーっとした目!
まだ環が来るまで時間はある。
顔を覗き込んで、そのさんの柔らかい前髪に触った。耳に掛けるように指先で。
それからこちらを向かせるように、頬を手のひらで包むように触った。
顔を見た。目は合わない。
「苑、こっち向いて」
体をこちらに向けてくる。
「苑」
やっと目が合う。顔を寄せた。キスする。
柔らかい。温かい。
小さく何回も押し付けるうちに、苑の腕が腰に回ってくる。
触れるだけで気が済むわけなくて、少し唇の隙間を開ける。息の漏れる音に刺激される。舌はどちらともなく絡れる。
このままベッドに倒れ込みたいくらいの気分だけど、どうにか落ち着かせる。
まだキスをしながら髪を撫でた。
それからゆっくり唇を離す。
視界にはつやつやした苑の唇が映る。
視線を上げると目が合う。潤んだ大きな瞳。
「……まだやめたくない」
………瞼を閉じた。叫ばないように。冷静に。
雄叫び上げたいけど我慢。
「桂、」
服を引っ張られた。
「こっち見て、目開けて」
ゆっくり瞼を上げる。
大きな瞳がこちらを覗くように見ている。
「今日は無理でも明日は、寝なくてもいいし」
目、開けてられない…!!
なんなの、なんでこんな可愛いの、さっきまでつんつんして、包丁で刺しちゃうとか言ってたのにこんな積極的……!
そして真っ赤…それがもうかわいくてかわいくて……
「そのさん〜〜〜!!!」
「うああ」
思いっきりハグをしてから抱え上げた。
顔中にキスしながら、寝室まで運んでベッドに寝かせた。
「明日嫌だって言ってもやめないよ!」
「こっちこそだから!疲れて動けなくても乗る。勃たせて」
「そ、そのさん」
「…ふふ」
目を細めて笑って、そのさんは大の字になった。
「お姫様抱っこなんて初めてされた!重かった?」
「余裕だったよ」
「……筋肉怖…」
「やめてよそんなこと言うの」
「はは!そういえばちょっと前に、環のこと今みたいにした」
「え、今みたい…?」
「お姫様抱っこして、ベッドに投げた」
「投げたんだ」
「うん」
「大丈夫だったの、環…」
「げらげら笑ってたよ」
「おお……」
ほんと仲良しだなふたり…
投げるとか言うから一瞬びっくりしたけど、ちょっと想像したらかわいく思えてきた…
向こうから、がちゃ、ぱたぱた…って音がする。
「ソノちゃーん!桂ー!」
環が帰ってきた。
「わ、いちゃいちゃしてた」
「してない」
そのさんはムッとした顔でそんなこと言う…
「してたけど、明日に持ち越しだから大丈夫」
環は大きい目を見開いて、それからけらけら笑った。
「ソノちゃん愛されてるーー」
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