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anxiety Xmas;79;環

クリスマスの話はすーーーーっごく楽しい。 ソノちゃんは家でだらだらしただけだよって言ってるけど、あんなロマンティックに指輪をプレゼントされて、だらだらしただけなわけない!!…調子に乗ってお酒をいつもより飲んでしまう。 「環はどうだったの?」 カバンから家の鍵を持ってきた。 貰ったキーホルダーをつけてる。それを見せながら、昨日の一部始終を話した。 「……ドラマ?」 「事実です!本当に隣にいたんだよ〜!」 「あとつけてたんじゃない?環の」 「そんなわけないよ!だって私が遅れて入ったときには、もう座ってたんだもん」 「すごいな…本当に偶然だったんだ」 「そうそう」 「運命だーとか思っちゃっても仕方ないね」 「ばかげてるーって思っても、さすがにね」 キーホルダーをテーブルに置いて、一口お酒を飲んだ。 「ソノちゃんと桂はさ、もういろいろやってるんだよね」 並んで座ってるふたり。 想像なんてしないけど、でも、付き合って結構経つんだし絶対そういうことしないわけない。 「どういう気持ち?」 「どういう気持ち…?」 「そういうことすると、どんな気分になる?」 「んー……んん…?」 「からだにさわったり、さわられたり」 ふたりを想像するわけじゃなくて単に… 好きな人の前で、はだかになって、触って、触られて、それがどんなにいい気分になんだろうって、知りたい。 わたしはそういうことを一回もしたことがない。映画、ドラマ、小説、漫画…あとはまあ…そういう動画も見てみたり…とにかくそういうフィクションのものでイメージしてみるだけ… それでも、結局最後には自分の体ではどうにもならないことを思い知らされて終わる。 「幸せだなって思うよ」 桂が言った。 「性欲を充たすって意味での気持ちよさはもちろんだけど、気持ちの面でも充たされる。することだけがすべてでは絶対にないんだけどね」 「……そうだな。すべてではないけど、やっぱり好きだと思う人とするのは、単純にものすごく気持ちいいし、結びつきが強くなる気がする」 「あ、好きじゃない人とするのはそうでもなかったってこと?」 ソノちゃんの方を見て、桂は唇の端を少し上げて笑った。好きじゃない人ってなんのこと…? 「……あー!セフレだあ」 思い出した! 「セフレとしてもきもちよくないの?」 「気持ちよかったよ、性欲の面に限ってだけど」 「待って、思ってた答えと違う…」 「性欲の面だけだって。1人で発散すんのと、誰かとすんのとでは違うじゃん。1人がレベル1だとしたら、セフレはレベル3くらいじゃない?相手によるけど」 「あ、相手による…」 桂の心がちょっとずつ折られていってる気がする… 「ソノちゃんソノちゃん、桂としたらレベルは?」 ソノちゃんは桂の方を見た。桂は不安そう。そんな桂を見たからか、ソノちゃんはあごを上げて桂を高圧的な目で見ている…! 「内緒」 「うあああああ!!まだレベル3に至ってもいない可能性もあるのかあっ!!」 「声でかっ」 「やだよ俺、そのさんの一番になりたいのにっ」 「桂は充分ソノちゃんにとっての一番じゃん」 「いや、分かんないよ?下手だなあこいつ…って思われてるかもしんないじゃん!」 「あのさあ、下手とかうまいとかって、あるの?」 「あるよ。いきたいのにいけないとか」 いきたいのにいけない?分かるような分からないような… 「環、背中かゆいときあるでしょ?」 「ある」 「ここがかゆいよってときに、微妙に違うところかかれたらむず痒くない?」 「あー、分かる」 「そんな感じだね、下手な奴」 「そのさん、どこ触って欲しいの」 「桂ちょっと泣きそうじゃん」 「そりゃそうだよ〜!全部教えてもらわなきゃ困る!」 「開拓するのが楽しいんだろ」 「そのさん〜〜」 ずっとソノちゃんといるのに、こんな話するの初めてだった。 多分酔っ払ってるせいもあるけど、きっと桂がこうしてそばにいてくれるようになったり、わたし自身の状況が変化したり、そういうことの影響がだいぶあると思う。 それはすごく、なんていうか、心地いいことだなって思った。

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