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mess up;80;都

26日終業式。長い。なにをこんなに話すことがあるんだろうって感じ… 端の方には先生たちがズラッと並んでる。 環を探した。いる!かわいい。 両手を前に組んでいる。…よく見たら、手の甲をさするように触ってる。寒いのかも。体育館って言ったって、暖かくもないし… 不意に環は隣を見た。 隣には竹井先生がいる。竹井先生は環に何か耳打ちした。環はムッとした顔で竹井先生の腕を軽く叩く。それからまた長々喋ってる校長の方を向いた。 そしたら竹井がまたこそこそ動いて、なにかを環にこそっと手渡した。環はそれを受け取ると、両手でしっかり握って竹井先生に笑いかけた。 ………嫉妬しちゃうからまじでやめてほしい… 「おい、」 「ん?」 隣の奴に声を掛けられた。 「なにガン見してんの」 「なにが?」 「見てたじゃん、あっちの方。夏目ちゃんでしょ?」 「いやいや」 「だって都、夏目ちゃん好きじゃん」 「!!」 はあっ!?ってデカい声出しそうになったけど、なんとか踏みとどまった。 「メイドの夏目ちゃんを攫ってったんでしょ?」 「誰が言ってたんだよそんなの」 「え?ちょうどあの時居合わせた奴から聞いた。なんで攫ったん?可愛すぎて?分かるよ気持ち。可愛かったもんメイドの夏目ちゃん」 「お前も行ったの?」 「混んでたからチラッと覗いただけ。行った奴から写真見せてもらった」 「写真…」 「めっっちゃ可愛いよね…正直あの写真見てから、いつもの格好してる夏目ちゃん見ても可愛いなって思うようになったもん」 …思ってほしくない。 「夏目ちゃんって彼女いんのかなー。なんかいるっぽくね?って話にはなったけど」 「!!!」 また叫びそうになった。なんだよ、何情報だよ!! 「なにそれ?」 「え?クリスマスイブに夏目ちゃん今日なにすんのー?って聞いたら、映画観に行くんだーって」 「映画って別に1人でも行くじゃん」 「デート?って聞いたらさあ、なんか…含みがあるっていうの?…めっちゃ良かったんだよ…見せたかったわ…」 「なにが!?」 「思案げ、っていうのかな…こう伏目でさ…まつ毛なっげえのな夏目ちゃん!なんつうの、」 多分真似してるんだけど、全然分かんない。 いかつい男子校生が瞼ふわふわさせてるだけにしか見えない。 「な?」 「いやいや全然分かんないから」 「いるんだろうなー彼女って感じ」 「意味分かんないけど」 「分かれよっ」 「分かんねえよ」 なんか可笑しくなって、一緒に笑いを堪えた。 「とにかくさー、あんな可愛い夏目ちゃんだけど、彼女はいるかもしんないってことよ」 「そっか」 いつの間にか校長の話は終わって、だらーっと教室へ戻る流れになっていた。 環の方をもう一回見たら、竹井先生となんか手を握り合ってるように見えた。 ……嫉妬しちゃうからな…

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