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mess up;83;苑
名残惜しそうに体が離れるのは、見ててこっちまで切なくなる……
環は急いでテニス部に戻って行った。
「…都、すげえ大人だったじゃん」
「そう?ほんとありがとう…ソノいなかったら、俺お通夜みたいな正月になってたかも」
「それは大袈裟すぎじゃん。家族でゆっくり過ごすでしょ」
「今年、誰もいないんだもん」
「え、なんで?」
「受験生じゃん?だから、3年になった時点で、どうせ年末年始も勉強しなきゃだなって思ってたし、ふたりで旅行でも行ったら?って言ってたんだ」
「すご」
「まさか夏休みで決まると思わなかったから、シンプルに1人で年越し」
「一緒に行けばいいじゃん」
「もう増やせないもん。めちゃくちゃ予約取れない超いい旅館予約したからねー母さん」
「……来る?」
「ん?」
「勉強しなくていいから1人でいる必要ないでしょ?年越し、さみしくない?」
「さみしいよー!でもいいの?」
「親御さんに話しといて。そして内密にお願いしたい」
「ソノーーーー!!」
めちゃくちゃハグされた。
「今電話する!」
都はすぐにお母さんに電話をして、俺もその場で話をさせてもらった。
物腰柔らかで感じのいい方だ。
すぐに話がついて、都は大晦日の晩から3日まで、うちに来ることになった。
「楽しみすぎて死にそう」
「生きて」
「ソノと一緒、嬉しすぎる!また一緒にお風呂入ろう〜」
「俺だけじゃないけどね、いるの」
「え…?まさかご両親とか…」
「じゃなくて、環」
切れ長の目が丸くなった。
「………嫌がられないかな…」
「大丈夫大丈夫」
椅子に座り直した。
都も近くの丸椅子に座った。
「俺さ、環には、都と付き合うことを反対するとまではいかないけど…一応、生徒と教諭でしょ?って強く言ってきたんだよね。だからかなり我慢してると思うんだ。だいぶ緩んではきてるけど…だから、なんていうのかな…さっきみたいに都に対してハグしたりするの見て、安心したと言いますか…」
「安心?」
「うん。なんかすごい、よかったって思った。俺も環も、誰かとこんなふうになることを諦めてたから」
半年前くらいまでは本当に、ふたりで支え合っていこう、くらいの感じだった。
「都には、感謝してる」
「……なんか分かんないけど泣けてきた」
「なんで?」
「俺もソノがいてくれてよかった!じゃなきゃ多分、ただ片思いのまま終わってたと思う」
「たしかに、はじめのうちは多くを語らなかったもんね」
「うん。自分の心の中だけで留めるつもりだったから…へへ、年越し一緒に過ごせるとか凄すぎ」
「俺いるけどね」
「ソノがいて、夏目先生とも一緒にいられてっていうのがいいんじゃん」
「……なんか分かんないけど泣けてきた」
「え〜なんで〜」
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