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mess up;93;苑

普通にキスしてたなー。 ひとりじゃ寂しいだろうし…って気持ちで特に何も考えずに呼んだけど、プライベートの環と一緒にいることは都にとったら相当なことだろうし、ああなるのも分からなくもない… 今なんて、部屋で何が起こってるか…………なぜか小さい頃の環が『ソノちゃん!』って言いながら両腕を伸ばしてこっちに走ってくる映像が脳裏をよぎる……………そんなんよぎるとか、どれだけ環を好きなんだよ!と思うけど、割と強めの愛情を持ってることは確かなんだよな…家族愛? それにしても、今何してるんだろう…もういけるとこまでいってんじゃないの…?そういえば環、前に酔っ払ってセックスってどんな感じかみたいなこと聞いてたしな………うわ、…… スマホが震えた。 …着信。桂から。 出るのを少し躊躇った。 まだあんまり、騒ついた気持ちが収まりきってないことに気がついたから。 何を話すんだろう? 明日は本当にうちに来るのか? なんか理由つけて断ろうか…今から夜通しドライブするし、みんな疲れて寝るから、……みたいな。それいいじゃん、ほんとになるかもしれないし。 「はい」 『そのさん?今平気?』 「うん、…もうすぐ出るから少しだったら」 『そっか、忙しいのにごめんね。ずっと電話しようと思ってたんだけどできなくて…』 「仕事忙しそうだったもんね」 ものすごい刺々しい言い方になってしまった。 『そう思って帰っちゃったの?一昨日、走ってったら本当にもういないんだもん…それで言われたんだよ持田に。受付の』 「なんて?」 『鬱陶しい!嫌われるよ!って…』 「そうなんだ」 『嫌われたくないじゃん…』 「桂のこと、嫌いじゃないよ」 『そう?…言い方…』 「一昨日ゆきちゃんって子に会ったよ」 『え!』 「桂のこと好きだって。彼女いるって言う割にはそんな気配が全然ないし諦めないらしいよ!ゆきちゃんと付き合ってあげなよ」 『えー?何言ってんの』 「本気だよ。いいじゃん」 『何が?』 「やっぱりさ、似合うよ、女の子が隣にいる方が。しっくりくるって。いいんじゃない?ちょうど年齢的にも結婚とか考える時期じゃん」 『それなんだけど、親に話していいかな、そのさんのこと』 「はい?」 『毎年のことだけど、結婚の話とかにやっぱりなるんだよね。俺にはパートナーがいるんだって話したくて』 ……パートナー、 「……俺たちって、そこまでの関係?」 『そう思ってるよ。そのさんとずっと楽しくいられたらいいなって』 「親御さんは結婚してほしいって思ってる、って事でしょ?孫だって見たいし、みたいな」 『まあ、そうかもしれないけど、』 「じゃあやっぱり、ゆきちゃんがいいよ!ぴったりじゃん。美人だったし、フレンドリーな感じで。実際ほら、楽しそうだったじゃん、トレーニングしてる時も」 『そのさん、』 「2人でにこにこして、かなりいい感じだなって思ったよ。しっくりくるっていうのかな。お似合いのカップルみたいな」 『そのさん、それは本気で言ってるの?』 「想像できちゃう感じだったよね。あー、こうやって日々重ねてって、結婚して、家庭築いていくんだなーって」 『苑!』 息を呑んだ。 『…本気で言ってるのかって聞いてるよ』 怒ってる、 初めて聞くトーンの声、何も言い返せない 『苑は、俺と一緒に過ごす事に対して何の感情もないの?そんなふうに言われたら悲しいよ』 「…指輪、着けてなかったよね」 俺は全然大人じゃない、 「ゆきちゃんと飲んだ時も着けてなかったんでしょ?トレーニング中も着けてなかったもんね、職場の規定だろうけど。ゆきちゃんと会った日の夜、環とオールしたんだ。いくら飲んでも全然すっきりしなかったから、俺も首から下げてたの取っちゃった。また会う時は着けりゃいいかと思ってたけど、桂が着けないなら着けなくていいね」 静かになった。 結構な間が怖かった。あ、怖いと思うんだ俺。それってどういうことだろう? そんなのたったひとつしかない。 俺は桂と別れることが怖い、ただそれだけ。 『……とりあえず親に話すのはやめておく』 「…うん」 『……ちょっと…そうだね…正直……かなり……、今……ごめん、』 小さく手が震えた。鼻の奥も痛い。視界が少し歪む。 「……桂」 『なに?』 「…俺、桂のこと好きだよ」 変な間がまた空く。 「好きだから、ショックだった。仕事だって分かってんのに、ゆきちゃんの体に触ったり笑顔向けてるの見たら、居た堪れない気分になった。桂が俺を好きでいてくれてるっていう安心感より不安が上回った。でも、仕事してるところを見ただけでそんなことを思う俺がやばいってことも、分かってる」 ちゃんと言葉にできた、 「嫌味な言い方して、ごめん。だけど、これが俺の本心だよ。今は、不安。だからパートナーだよって言われても、嬉しさより不安が勝ってる」 言葉にしながら冷静に、それから苦しくなる。 桂にとって俺は、鬱陶しいだけなんじゃないか 『……分かった。…また、連絡します』 敬語になるの、怖い 「…はい、」 『じゃあ、また』 切れた。 深いため息が出た。俺はなにがしたいんだ、 桂を試したかったのか? だとしたら最悪だ、 車のシートを倒して、目を閉じた。

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