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mess up;97;苑
ドライブコースに入る前に、少し休憩することにした。環は車で待ってるらしく、都と一緒に外を歩く。
「寒」
「車快適すぎて反動がすごい」
「快適ならよかった」
息が真っ白。
ほんと寒すぎる。
「ソノ、あっためてあげよっか」
都はそう言いながら、黒いモッズコートを広げて抱きついてくる。
「あったかい」
「ねー!」
桂にされるハグのことを、急に思い出した。
今、桂はなにしてるんだろう。
ご両親に結婚の話をされてるかもしれない。
……まあ、それが幸せだよな
何度想像してみても、普通に結婚して子供ができて、幸せな家庭を築く…って方がよく似合うってイメージを覆せない。別にゲイでもないんだし。
俺は俺で、特定の誰かと付き合うのはやっぱりだめなのかもしれない。しょうもない嫉妬するし。そういうことは何も期待しないで、ただ発散するって方がいいのかも。後腐れなく。
桂との事はいい思い出になればと思う。そう思おう。別れたくない。違う、幸せを祈ればいい。いいんだ終わっても。そういう方向に舵を切ったのは俺だ。
「ソノ、聞いてる?」
「ん?ごめん、聞いてなかった」
「だから、やっぱり戻ろうよって話!」
「戻る?」
「家に戻るの」
「なんでよ」
「今から戻ったら何時になる?」
「えー…今5時だろ?だいぶ遠くまで来たからなー……8時前後かな…渋滞してそうだし…っていうかなんで帰りたいの?」
「ソノが眠くなっちゃわないかなって、疲れないか心配だーって、さっき環が言ってたから」
「そうなの?別にどっちでもいいけど、環が外で年越ししたいって言ってた気がするよ?…聞き違いかな…」
「ソノのことの方が大事じゃん。俺と環は車で寝れちゃうけど、ソノは運転することになるし…ドライブ、十分楽しんでるから、家でも楽しみたいなーって」
「そう?じゃあそうするか。帰りサービスエリア寄って、コーンスープ買おう」
「コーンスープ?」
「うん。環が飲みたがってたから」
「俺も飲みたい!」
「いいよ。3人で飲もう」
「あーーー、なんか今すごい幸せだーー」
都の腕の力が強くなってくる。
ぎゅーぎゅー抱きしめられて、たしかに今幸せだなって思った。
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