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mess up;100;環
お蕎麦を食べ終えて、台所を片付けてからコーヒーを淹れた。都くんは牛乳とコーヒーが91くらい。ほんのりコーヒー味の牛乳…
それから、シャーペンを交換した。
手元にはぴかぴかひかる[Miyako]の文字。
都くんは[Tamaki]と刻印されたところを親指で何回か撫でて、満足そうにカバンにしまった。
「学校で使うの楽しみ」
使うたびに都くんの名前を見たら、たしかに気分があがりそうだな、って思う。
「ふたり、帰ってこないね」
都くんはそう言いながらソファーに座った。
「そうだね…なんか心配になってきたな…」
お蕎麦は、ソノちゃんと桂のぶんは茹でなかった。いつ帰ってくるのか分からないし…とはいえ、早くふたりで帰ってきて、あーよかった!って思いたい……
「いい意味で帰ってこないのかな」
「いい意味で?」
「うん。仲直りして、もういてもたってもいられないけど家には俺たちがいるから……っていうので……」
「……えー?」
都くんは体勢を変えて、ソファーの背もたれに肘をついて、頬杖をつきながらわたしを見た。
表情が大人びて、唇の端を少し上げて笑うのが、なんかそういう、気配を感じてしまう、
「車で、ふたりで」
「……え、車で…?」
「そう。車で」
…いてもたっても…?
…あらぬ想像をしてしまった。車でとか、信じられない!
「そ……それはちょっと嫌かも…!だって、わたし普通に乗るしっ」
「ん?」
「なんか、やじゃん!」
「なんで?」
「なんでって……だって…ど、どこでするの?うしろ?」
「うしろ?さすがに前に乗るでしょ」
「前!?」
「…する、って何?」
「い、言えない!!」
「えー?………あ!!まって、環、やらしいこと考えてんじゃない?」
「やっ、…」
だって、帰ってもわたしたちがいるからって…、車でふたりで、って言われたら、
「俺は、車でふたりで出掛けちゃうんじゃない?って思ったんだけど」
「……え、すごく思わせぶりな雰囲気醸してたよね?」
「いやいや、そんなことないよ?」
ふふん、って笑って、都くんは意地悪だ…
「車でやっちゃうのとか、もししたらすごそう」
「は、犯罪じゃんっ」
「犯罪なのかな」
「外でそんなことしたら逮捕だっ」
「たまにそういうことしてる動画とかあるじゃん」
「そんなの見た事ない!み、都くんは見るの、そういうの」
「趣味じゃないけど」
「趣味じゃない…」
「俺はちゃんとしたのが好き」
「なにそれ…「ちゃんと」の概念知りたい」
「なんか、どっちも幸せそうにしてるのが好き。気持ちよさそうだなーって感じのやつ」
「そうなんだ、」
「ああーー、こんな話してたらどきどきしちゃうね!」
そう言って見せる笑顔は屈託なくかわいくて、思わず笑い返してしまった。やらしい話してたとは思えない…
「環」
「なに?」
「へへ」
抱きつかれた。頭を撫でる。
「いつ帰ってくるかな」
「ねー。連絡してみよっか」
「それはちょっとお邪魔じゃない?」
「そうだよねえ…」
首筋に鼻先が触れて、唇を押し付けられる。何回も優しく、
ばかになってるからすぐにスイッチが入っちゃって、変なうわずった声が出ちゃう、
「帰ってこないなら、したい」
「帰ってくるよ、」
「したくなった」
さっきまでこどもだったのに、急に大人の顔になった。慣れてるみたいに組み敷いてきて、肩から上、あちこちたくさんキスされる。抵抗できなくなる、
こんなに声って漏れ出てしまうものなんだ、しらなかった
唇を咥えて我慢を試みるけど、すぐだめになる
セーターはまた捲り上げられて、
「…へへ、サッと外せた」
下着も緩んでしまう。
それからすぐに顔がくっついて、ぴちゃぴちゃ、音がなりはじめる。
さっきは見つからずに済んだけど、下も当たり前に反応してしまっていて、しかも、違和感とか理性とか、考える頭がばかになってるから、きもちよくなりたい、その一点しか考えられなくて、
「環」
「ん、…なに?、」
「全部見たいって言ったら嫌?」
「帰ってきちゃう、」
「お風呂は?だめ?」
………都くんの手に陥落してしまった。
お湯はりのボタンを押す瞬間以外はやっぱりばかになったままだった。
お風呂場の前で都くんがバサバサ服を脱いでいくのを見て、思ったより筋肉質 だ、とか、既にもう、ゆるく勃ってるじゃん、とか、そんなの思ってたら顔がすごい熱くなって、真っ赤なんじゃないか…って恥ずかしい、
それに脱ぐの自体もすごく勇気が要った。
都くんは「寒い!」って言いながら先に入っていったから、息を吐いて、少し気合を入れてから服を脱いだ。
タオルを握りしめながら、ドアを開けた。
都くんはこちらに背中を向けるようにお風呂につかっている。鏡越しに顔を見たら、ぎゅっと目を閉じている。
「いいよって言われるまで、目閉じてるから!環がよくなるまで、こうしてるから」
…こういうところが本当に好きだなって思う。
掛け湯をして、そっと湯船に入る。
「都くん」
「ん?」
「もう少し、前に行って」
「うん」
都くんは膝を抱えて、小さくなった。
わたしはそのうしろにつかった。
背中が広い。すごくすてきな背中だ。縋りつきたくなるような、男性の背中
「あっ、」
その背中にくっついた。右頬をくっつけて、両肩に手を掛けた。ら、都くんから予想外に声が漏れて、慌てて離れた。
「ごめん!違うよ、思いがけなくて……もう一回、して」
もう一回、くっついた。
肌が触れ合う感覚が心地いい。
「……やばい…今、はだかだよね…」
「そうだよ」
「…だめだ……見たいのに、見たら…ちょっと俺だめかもしれない」
「なにそれ…」
「すぐ、いっちゃいそう」
「目、閉じてて」
ここまできたら、都くんとどうにかなっちゃいたいって、思ってしまう。完全に本能の赴くまま、振り切れてしまってる、
立ち上がって、都くんのからだを少し押しのけながら、前に回り込んだ。ばしゃばしゃ、お湯の音が響く。都くんのにのうでに触る。向かい合わせに座って、指輪の着いている大きな手に指を絡ませて握った。それから反対の手で都くんの目元を隠すように覆った。
ゆっくり顔を近づけた。
唇に唇を、そっと重ねた。柔らかい。何回も何回も、音が鳴る。舌がもつれて、息があがって、堪らない気持ちになってくる。
都くんのそこ、に、繋いでいた手を解いて触った。環、環、と掠れた声がする。お湯が規則正しく波打つ。もっと近くになりたくて、都くんの膝を少し押した。脚がまっすぐ伸びて、その上に跨った。触る手は止めない。
「たまき、あっ、…あ、…まっ、て、」
キスをした。口を塞ぐみたい。なんでこんな暴力的なことしてるんだろう、
「みたいよ、みせて、おねがい」
手首を掴んで動かされて、至近距離で目が合う。
「環、」
それから体が少し離れて、視線はわたしのからだに絡まっていく
「…きれい……」
抱きしめられて、それから腰を掴まれた。膝立ちになる。都くんの目の前になった胸元には、また舌が伸びてくる。舐められる感触、吸われる感触、噛まれる感触、全部気持ちいい
「きもちいい?」
「きもちいい…」
「ここも触っていい?」
いい、なんて言ってないのに触られてる
力が抜けて、お湯に沈んでしまいそうだ
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