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neeedyyy;109;桂

怒れる環だ。 こんなふうになるんだな…と思ったし、世に言う『反抗期の娘』的な?そういう感じもした。 ソファーにがっぷり座って、ムスッとして、唇が曲がって、ため息吐いて… なんかそれはそれで可愛らしいし、環の左隣にくっつくように座った。で、肩に腕を回して揺さぶるみたいに抱き寄せて、顔を覗き込んだ。 「どうしたの環?そんなムスーッとして!やな事でもあった?話してみ?」 「…なんか言い方がうざい」 「!!!」 待って、本当に反抗期じゃん…なんで… 「桂、本当にパパ感あるじゃん」 「ちょっとそのさん、嬉しくないよこの状況で!世のパパさんも反抗されたら悲しいでしょ」 「そうなんだ」 「知らないけど!」 そのさんはローテーブルに温かいココアを持ってきてくれた。 「環どうすんの?また別れるとか言うの?」 「え!?またケンカしてんの?」 そのさんはこくこく頷いた。 でもクリスマス辺りもなんかあれだったし、正月も若干もにょもにょしてた気がするし、なんか多くない? 「今回はどうしたの」 はあああ…って深いため息をひとつ吐いてから、環は口を開いた。 「渡辺君がクラスの子とこうやって手を繋いでデートしてた」 こうやって、っていうのは恋人繋ぎだ。 「ふたりで?」 「何人かで」 「それデートなの?」 「こうやって繋いでた」 怒ってる… 「若い子は誰とでもするのが普通なのかもしれないって思ったよ?けど嫌だって思っちゃったんだよ、他の人とそういう感じで手繋ぐの見たら苦しいって!でも渡辺君は毎日いつも通りに連絡してくる。意味が分からない!他の人と付き合うならそう言ってほしいじゃん!連絡なんてしてくれなくていいし!!」 顔が真っ赤だ…目もうるうるしてる… 「……手繋いでた子がね、渡辺君の腕組んでたの、教室で見たんだ」 「その時、都どんな感じだった?」 「背中だったから分かんない…腕にね、胸が当たってた」 「え!」 思わず大きい声が出てしまって、ふたりに睨まれた。 「……どうあがいても、わたしには無理だったんだよ」 そのさんは黙って環の右隣に座った。 「都は、環が好きだよ」 「そんなの分かんない」 「環はもういいの?」 「…全然よくないよ」 環の目からぼろぼろぼろって、涙が溢れた。 「結局だめだった」 そのさんと目が合った。 ふたりで環を包むみたいに抱きしめた。

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