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neeedyyy;115;都

ソノは環のことを抱きしめて、子供をあやすみたいに優しく撫でた。 環はめちゃくちゃ泣いてて、なんでこんなことになってしまったのか…すごく後悔したし、自分が情けないし苦しい。 「都、おいで」 ソノは手まねきした。 でも環が俺が行くと嫌なんじゃないかな、 「いいから」 近づいたら、引っ張り込まれるみたいにハグの輪の中に入ってしまった。 環の小さな嗚咽が聞こえる。 ソノの手を背中に感じる。 「お互い、つらかったね」 俺まで涙が出てきた… 「環はどうしてもつらくなっちゃうよね。いくら俺や都が大丈夫って言ってもさ、そんなんでどうにかなることじゃない」 環は小さく何度も頷いた。 「都は優しい。優しさのあまり辛い結果になってるんだな、きっと」 ソノの首筋に、目元を押しつけた。 「ふたりのことだから俺がどうこう言うのは変だけど、どうみてもお互いに好き同士だし、別れることないじゃんって思う。ゆっくり話して、分かり合って、そしたらもっと仲良くなれるよきっと。今日はゆっくりすごしな、ふたりで」 「そうそう。俺とそのさんは出かけてくるからね」 桂先生の声がして、顔を上げた。 環も同時に顔を上げてた。 「おはよう」 「おはようそのさん。ごはん、続き勝手に作っちゃった!みんな食べる?」 「いいね、みんなで食べよう」 …鍛えてる人って、本当に鶏肉とブロッコリーのやつ食べるんだなーって思った。テーブルに並んでる。なんか気が紛れてきた。 それとあとはロールパンとヨーグルト。ぶどうもある。 「…超豪華だ」 「そう?昨日買ってきてたのを洗ったり温めたりしただけだけどね。レンチンしたり」 「桂先生すごいね…!」 「あはは、ありがとう。都は何飲む?そのさんはコーヒー、環はジュースでいい?」 「…うん」 桂先生はテキパキ動いて、飲み物を並べていく。 「都、コーヒー牛乳にする?半々くらいのやつ。俺それにするんだけど」 「そうする」 「うん、分かった」 勝手に桂先生の愛みたいのを感じて、なんかめちゃくちゃ最高だなって思った。 桂先生とソノはいつも通りの感じでいてくれて、それもありがたかった。 ごはんを食べ終わったら、ふたりはジム行くねーって行ってしまった。 環と俺、ふたりきりになった。 片付け終わったダイニングテーブルに、向かい合わせで座った。 環の姿を正面から見た。 ばちっ、て目が合った。 「さっきは、ごめんね」 環は視線を外さないまま、はっきり言った。 「嫌な態度とって、ごめんなさい」 「それは俺の方だよ!怒鳴ったりしてごめんなさい…最低だった」 「気持ち、伝わった。わたしも同じようなこと思ってたわけだから…それで…竹井とのことだけど、」 環はもう一度丁寧に、冷静に、竹井先生とのことを話してくれた。 男性相手のガサツなスキンシップ(それは無意識的なもので、きっと他意はない)をされても、受け入れざるを得ない…それを過剰に拒否したら起こるであろう違和を、環は必死で避けていた、ってことだ。 俺はそれに気がつくことができずに嫉妬ばっかりして、 「俺、もっと冷静で、ちゃんと物事を考えられるように努力する。環のことをもっと知って、もう二度とこんなんならなくていいように、頑張る。だから、別れたくない」 目を見て言った。

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