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neeedyyy;121;桂

部活が始まる前に、保健室に寄った。 いろいろあってからそのさんに会えてなかったこともあって、会いたい気分だった。 「失礼します」 「はーい…あ、桂」 ちょうど1人で事務作業をしてたから、近づいてほっぺに触った。 「んん…」 「会いたくて来ちゃった」 「距離!距離を取って座って」 「えー!なんでよ、誰もいないでしょ?」 「いないけど油断できません」 「そのさん〜」 「だめ」 「あーーそのさんーーー」 そのさんは俺の手を掴んで引っ張った。力強い!それから唇にキスをしてくれた。 そして顔は真っ赤。 「もうしない」 可愛すぎる…!! ドアが開く音がして、間髪入れずに 「ソノーー」 都が入ってきた。油断ならないとはこういうことか… 「ノックしろよ」 「あ!桂先生〜〜」 都に思いっきりハグされる。 もう慣れた。抱きしめ返した。 「会えたから言うね!今度モデルしてもらうときは、前より長めにポーズしてもらおうと思ってるんだけどいい?」 「いいよ」 「しんどくならない程度にして、何回か繰り返すようにするね!ちゃんと油画の作品にしようと思ってるんだ。桂先生をモデルにさせてもらう作品と、ソノをモデルにさせてもらう作品とで対にしたいんだけど、ソノもやってくれるよね」 「は?」 「お願い!」 「えーーー」 「ソノ〜」 「分かったよ」 「さすがソノ〜!ありがとう」 ……そのさんも脱ぐの? 「いやだめじゃない!?そのさんも脱ぐの?ちょっと、え、だめだって!!」 「桂先生ー、興奮しすぎじゃん」 「いやいやいや、興奮っていうか脱ぐの?待って、一旦落ち着かせて」 「落ち着かせてって!なにそれ?初めて聞いた」 自分でもちょっと何言ってんのか分かんないけどさ、 「桂先生、大丈夫。全部脱いでもらうとかじゃないから!ふたりともすごい描き甲斐があるのと、こういうふうに描きたいなっていうイメージが湧いて…だから、逆に今度は着てもらうかも」 「あ、じゃあ大丈夫」 「脱ぎたかったら否定はしないけど」 「いや、そのさんのことは絶対着衣で描いて」 「桂先生はどうする?脱ぐ?」 「俺はどうなってもいい」 そのさんがめちゃくちゃ吹き笑いしている… 「どうなってもいいの?」 「いいよどうなっても…でもそのさんがどうするかに関してだけはまず私を通してからにして下さい!!」 「気持ち悪…」 そのさん、すごいジト目で見てくる… 「……いいなー」 「え、今のくだり見てそんなん思える?」 「うん、思うよ。桂先生、ソノへの愛情半端ないじゃん。ソノはそれをちゃんと受け止めるでしょ。どっちのあれも羨ましい。俺も愛情で爆散したい」 「死じゃん、爆散したら」 「死にたいくらいなのがいいんだって。激重」 都は髪をかき上げた。 「死にたかったなー。それくらい好きだった」 びっくりするくらいきれいな姿に思えた。 言ってることは怖いけど、なんか、映画のワンシーンみたいに見える。 「でも、そういうのって迷惑だって分かってるから、絶対しない」 「死ぬな」 「うん、死なない」 「あと、俺は桂のこと好きだけど、爆死はしない」 「だよね」 「だけど愛されてるって思えるのはたしかに幸せだよ…な…」 そのさんは真っ赤になった。 ……自爆してるじゃん…! 「今の聞かなかったことにして」 「それは無理でしょ。ほんとそのさんは可愛いんだから……!!」 「うるさいなあ!」 「ソノ可愛すぎるーーー!!」 「やめろやめろっ」 都とそのさんでキャッキャしてるのずーっと見てたいけど、もう部活の時間だ… 「やばい、部活行ってくる!」 「行ってらっしゃい」 ふたりに見送られて、部室に向かった。 部室のドアを開けて奥の自分のロッカーに向かう… 「!!」 環がベンチに座ってる…! 心臓潰れるかと思うくらいびっくりした…めちゃくちゃどんよりしてる… 「…桂」 「お疲れ様!どうしたの?」 「会いたかっただけ…ほら、昨日は会わなかったし、」 「そっかそっか」 隣に座って細い肩に腕を回した。 強めに抱き寄せて、顔を覗き込んだ。 「俺に会いたかったの〜?」 わざと猫撫で声で聞いた。おえーって言われるくらいのテンションで。 「…会いたかった」 思ってたのと違うリアクションがきた。 「渡辺君は、大丈夫だったの」 「あ……あー、うーん…まあ、まだ完全に元気いっぱいではないにせよ、なんとかやってるように見えるよ!」 「…そっか、じゃあ、よかった」 「心配だった?」 「そうだね、…だって、死にたいって言ってたよって、ソノちゃんが言うから」 「そりゃ心配になるわ」 「指輪とかペンとかを、ソノちゃんに託したんだけど、渡したのかな」 「あー…どうだろう。さっき保健室で、たまたま3人で居合わせたんだけど、その時は別に何も渡したりとかはなかったな。指輪って、都が作ったやつ?」 「うん、」 「返すの?」 「わたしが持ってるのは嫌だと思う」 「なんで?」 「嫌いな人に持たれたままって、気持ち悪いんじゃないかな」 「嫌いなわけないじゃん!え?都が環のこと、嫌いって?」 「うん」 「なんで嫌いって思うの?」 「授業の時、ペンを返してくれようとしたんだ。名前を刻印してるの。お互いの名前を持ってたから、それで」 「それはそうだからじゃん。嫌いとかじゃなくて、環の名前が入ってるから、返した方がいいかなって思ったんだよ。え、いいじゃん別に返さなくて。だって都が傷つくんじゃない?」 「え?」 「環のことが大好きで、環を思って作った指輪でしょ?返されるのが一番傷つきそうじゃん。要らないなら仕舞い込むか捨てるかした方が良くない?」 「捨て……」 言い過ぎたかも、 「捨てるなんてできない、大切なものなのに」 「大切なものなら持ってなきゃ」 「でも持ってられない、もう、ソノちゃんに渡したし、」 ………今、もしかしてそれ都に渡してんじゃない?

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