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adore u;127;環
都くんは壇上で、答辞を読んでいる。
肩までの黒い髪はいつもよりきっちりめにセットされて、とても凛々しく見えた。
隣では竹井がずっとハンカチを目元に当てて鼻を啜ってる。めちゃくちゃ涙もろい。
後ろの方には桂やソノちゃんもいる。
3年生たちが卒業するのは寂しいけど、それよりも新しい生活の始まりだ!って思うから、晴々と嬉しい気持ちの方が強い。
無事に卒業式が終わって、生徒達はクラス毎に集まっている。
その間に、桂とふたりでテニス部の子達へのプレゼント…と言っても、メッセージカードとちょっといいお菓子…をすぐ渡せるように準備した。桂も目元が赤くて、涙もろいんだなってつくづく思った。たしかに毎年泣いてるもんなあ桂。
まだみんなクラスの前で別れを名残惜しんでるみたいだった。桂とわたしも3年の教室前に向かった。
「あ!夏目ちゃん!」
都くんのクラスの子が声を掛けてくれた。
写真撮ろうって囲まれて、たくさんいろんな子と撮った。みんな大人になったなーって思って、ここにきてうるっときてしまった…!
「俺ちょっと夏目ちゃんに言いたいことあるんだけど」
「んー?」
この子は都くんと仲がよくて、クラスのムードメーカーって感じ。大学もすごいエンジョイしそうー!
「メイドの夏目ちゃん見て以来、結構俺まじで夏目ちゃんのことかわいいって思ってました」
「わあ」
「卒業だし、ハグしていいすか」
「えーーー」
「お願い!!」
「いやいや、今スーツだし。全然メイドとかじゃないし」
「いつもかわいいなって思ってたんだって!!みやこの事イジってたけど、普通に俺も夏目ちゃん目で追っちゃってた!卒業したくねえ〜〜」
周りから留年しろとか冷やかされ始めてるし…
「まじで夏目ちゃんが女だったら、今絶対告ってた」
「ありがとう…?ん?ありがとうじゃないか…?」
「夏目ちゃんーーーー」
思いっきり抱きつかれた……
歓声上がってるし…
でもなんか、この学年ってみんな個性があって、元気で面白かったなあってしみじみ思った。こんなことしてきた子は初めてだったし、そもそもメイド服着ろとか言ってくる子だっている学年だし…卒業しちゃうんだ、さみしい。
その子の背中に腕を回して、ぽんぽん叩いた。
「これからも楽しくやるんだよ」
そろそろ、って体離そうとしたら離れない。なにこれ
「う、…もう充分ハグしたじゃんっ」
「夏目ちゃん超いい匂いする」
くんくんされて、くすぐったくて震えてしまった。
「こらっ!卒業したからって先生を雑に扱っていいルールとかないから!」
「もうちょっとだけいいじゃん」
そんなこと言うからまた周りの皆さんがやいやい言い出して、勝手に写真撮られるし……
「おい!!!」
急に大きい声がしたと思ったら、都くんだ、
かなり大きい花束持ってる…!!
「なに抱きついてんの!!」
「えー?今日で卒業だし、念願のハグしてもらってるとこ。夏目ちゃんめちゃいい匂いするんだけど」
「知ってるし。離れろまじで」
都くんはこっちを向いて腕を広げた。
「夏目先生、俺にもして」
「ええー……」
「俺にはしてくれないの」
「いや、してくれないとかそういうんじゃなくて…」
とかもにょもにょ言ってるうちに、都くんは周りの子から話しかけられはじめて、どうやらここに至るまでにたくさんの後輩に呼び止められて話してたらしいことが分かった。花束は後輩たちからのプレゼントらしい。すごすぎる!
でもその間にわたしもテニス部の子が集まったよーって呼ばれて、その場をそっと立ち去った。
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