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総触れ

「上さまの…おなーりー」 御鈴廊下では変わらずの上さまのお通りがあられ、御台の隣に座る秋乃は上さまからのお言葉を待った しかし、上さまは秋乃を通り過ぎ他のお腹様の(うしお)(こと)をも通り過ぎ、まるではじめから決まっていたかのように碧の前で立ち止まり今宵の渡りを告げた。 秋乃、潮、琴の三者は唇を噛み鬼の形相で碧を睨み立ち上がると上さまの後に歩いていき、総触れの場である御小座敷へと向かった 清麗院は上さまとともに先祖への礼拝を行うため仏間へと上がった。 日々の変わらぬ朝の行事であり、2人の間に普段会話はないがこたびは上さまが口を開いた 「御台よ…碧のことは残念であった」 「過ぎたことにございまする」 「そなたにこのようなことを願うのはいかがなものかと思いはするが…碧を守ってやってくれ」 「言われずとも…」 「さすが余の番じゃ」 清麗院は心のうちで初夜以降抱きもせず、4人に手を出した善仁に対して恨みを感じたが顔に出さずただそっと自分の首元の噛み傷をさすった。 他ならぬ番のこの跡が痛む時期などとうに消えたはずなのに、清麗院はチクリとそこが痛むのを感じ扇子で顔を隠し唇を噛んだ

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