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仏間

碧の懐妊から数日後、上さまが鈴の音とともに大奥へとやってきた。 「上さま、おはようございます。本日もそのご尊顔拝謁、恐悦至極にございます」 「ああ、おはよう御台」 それを清麗院が出迎え2人連れ立ち仏間へと入った。 普段、必要以上の会話の無い2人だがこの時ばかりは言葉を交わした 「上さま…こたびの碧の懐妊、誠におめでたく喜ばしきことと存じまする。無事の出産をともに先代様にお参りしたく…」 「言われるまでもない…。祖先の加護があるよう共に祈ろうぞ、御台」 上さまはついぞ清麗院にかけたことのない優しい声音で答えた。 チクリと胸にささるものを感じたが清麗院は眉ひとつ動かさず両手を合わせ祖先の仏壇へ祈りを捧げた。 そうして、上さまと清麗院は礼拝を済ませると御鈴廊下へと渡った。 ずらりと頭を垂れて並ぶ面々を一瞥し、2人は廊下を歩いていった 通り過ぎるたびにひとりまたひとりと立ちあがり列へと加わり、碧の前へと来るとしばしの間上さまは立ち止まり碧と見つめあった 2人の間の割り込めない甘い雰囲気に、御台のすぐ後ろを歩き御台に次ぐ絢爛な服に身を包んだ青年が腹を摩り、憎しみに満ちた表情で2人を眺めた

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