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秋乃

「碧殿…」 あるどんよりとした天気の日、ひとりの青年が碧の部屋を訪ねた。 「どちらさまで?」 見えた人物に碧は恐れを抱き慌てて頭を下げて、両手を着いた 「こ…これは…秋乃さま…っ。このような穢れの部屋に御腹様の方から来させてしまうとは何という非礼を…っ申し訳ございませぬっ」 「良い。お前はまだここに来て日が浅い。顔をあげよ」 言葉の後恐る恐る顔をあげていくと恐ろしい形相をその人が一瞬したように見えたが、見間違いだったのかと感じるほどにこやかな顔で碧を見つめていた。 「あ…あの、いかがなされてこちらには…」 「こたびのめでたき知らせをこの奥で知らぬものはいない」 「それはありがたく思います」 「これを…」 秋乃は懐から10数包の赤い包みを畳へと落とした 「これは?」 「わたくしも賜りました栄養剤にございます。しかしこのことは内密に…。他の者に知られてもなかなか調達できぬ薬ゆえ。子の健やかなる成長をお祈りします」 秋乃はお辞儀をニヤリと口端を歪め、お付きのものを従えて碧の部屋から退出した。

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