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第3話 アルバイトの依頼
愛香の馴れ馴れしさに訝しさを感じながらも、志水はアルバイトと聞いて心が動いた。
好きなだけ食って飲んだし、これ以上この合コンにいてもしかたない。このあとの二次会には最初から行くつもりはなかった。
……そういうわけで愛香の申し出を受けることにした。
「あ、オレ、鞄、席に置いたままだ。取りに行ったら小野に色々言われそうだな」
「それなら大丈夫。こっちに来るときに志水くんの鞄もこっそり持ってきたから」
愛香は志水の鞄を差し出した。
二人は繁華街から少し離れたところにある小さな喫茶店に入った。合コンの二次会はカラオケらしいから、そこへ向かう一行と出くわさないためにするためだ。
窓際の席に座って、コーヒーを注文すると、愛香はいきなり話を始めた。
「あのね、私、高校一年の弟がいるんだけど……」
「……うん」
アルバイトという言葉につられ、喫茶店まで付き合ったはいいが、いきなり家族の話をされ、志水は少々戸惑った。
「入学したばかりの頃は元気に学校に行ってたんだけど、ゴールデンウイークがすぎたあたりくらいからかな、突然学校へ行かなくなって。いわゆる不登校ってやつになっちゃったのね。それに智流 ……あ、弟の名前ね」
彼女はそう言うと、鞄からメモを取り出し、そこへボールペンで弟の名前を書いた。
「智流は大人しいけど、決して暗い子じゃなかったのに、だんだん元気もなくなってきちゃって」
大きなアーモンド・アイが心配げに曇る。
「引きこもりってやつ?」
志水が聞くと、愛香はかぶりを振った。
「そこまでは。時々図書館に行って、勉強してるし。多分、原因は学校にあると思うのよ」
「……いじめかな?」
「ええ。その可能性が大きいと思う。けど、そういうのって家族には相談しにくいって言うじゃない? だから志水くんに智流の家庭教師を兼ねた相談相手になって欲しいのよ」
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