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第4話 アルバイトの依頼②
「でも、そんなナーバスな問題なら、相手は男よりも女のほうが向いてるんじゃ――」
言いかけた志水の言葉は、愛香の切って捨てるような声で遮られた。
「バカなこと言わないでよっ! 女なんかとんでもないっ」
「どうして?」
「智流は私そっくりの超美形なのよ? そのうえ素直で大人しいし。女なんかを家庭教師につけて、智流が誘惑されたらどうするのよっ!!」
「…………」
目を吊り上げて叫ぶ彼女の迫力に、志水は圧倒された。どうやら愛香は弟を猫かわいがりしているようだ。
「女性がNGなのは分かったけど、どうしてオレが選ばれたわけ?」
志水が問うと、愛香は少しふんぞり返って腕を組み、言った。
「ずっとね、智流の家庭教師けん相談相手の男の子を探してたんだけど、これがなかなかいなくてねー。勿論、合コンなんかに参加して、ギラギラした目で女の子を物色している男なんか論外よ。今日は友達に誘われて、気分転換に来てみたんだけど、良かったわ。志水くんってぜーんぜん女の子には目もくれないで、ひたすら食べて飲んでたでしょ。他の男どもと違って全然ギラギラしてない。そういうところが気に入ったし。……それにね」
「それに?」
志水が愛香に言葉の続きを促すと、彼女はピンクのルージュで彩られた唇をほころばせた。
「智流も志水くんなら、気にいると思うから。あの子、私と同じで面食いなのよ」
――この時から運命の出会いへのカウントダウンが、始まったのだった。
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