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第5話 アルバイト初日

 次の週の月曜日の夕方、志水は網埼家へと向かっていた。  愛香から教えられた住所とスマートホンの地図ナビを頼りに足を進める。  結局、志水は愛香の頼みを受け、彼女の弟の家庭教師けん相談相手のアルバイトをすることになった。  初対面の相手からの頼みを簡単に引き受けたのは、あさましいがお金が欲しかったからだ。  志水は大学に入ったときから一人暮らしをしている。大学の入学金と授業料は親に出してもらっているが、家賃、生活費、その他もろもろの雑費はすべて自分でまかなっていた。  ずっと親戚が経営するレストランでアルバイトを続けていたのだが、親戚がその店を畳むことにしたので、志水もバイトがなくなってしまったのだ。  お金だけを重んじるのなら、他にもバイトはある。モデルなど芸能関係の仕事の誘いもあった。  しかし志水は大学の授業に影響が出そうなものは避けているので、なかなかいいバイトが見つからず、ここ最近はお金にきゅうきゅうとしていたのだ。  だからこそ、ただで食べて飲める合コンにも参加したのだが、まさかそこでバイトが見つかるなんて、縁とは不思議なものだ。  愛香が頼んできたバイトはとても条件が良かった。網埼家は志水のマンションから近いし、アルバイト料も、月・水・金の夕方の二時間で、充分以上の額を貰える。  網埼家は裕福な家庭で、智流の不登校には姉の愛香だけではなく、両親もとても心配しているらしい。  ふう、と小さく溜息を落とす。  志水は一人っ子だから、年下の、それも心に悩みを抱えた男の子とうまくやっていけるか、それだけが不安だった。  

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